近年、物流業界ではドライバーの高齢化が進み、安全対策の重要性がますます高まっています。高齢ドライバーは、豊富な経験と高度な運転技術を持つ一方で、加齢による身体機能の低下や判断力の衰えといった課題にも直面します。そうした状況の中で、安全な運行を維持し、事故を防ぐためには、企業が積極的に安全対策を講じることが不可欠です。
今回の記事では、トラックドライバーが高齢化している背景や、加齢に伴う運転への影響、安全を確保するために企業が取り組むべき施策などを紹介します。
トラックドライバー高齢化の背景
冒頭でも説明した通り、近年トラックドライバーの高齢化が進んでおり、自動車運転業務の従事者は全職業の平均年齢と比較して約3~17歳ほど高いのが現状です。また、トラック業界で働く人の、約45.2%は40~54歳で、中・大型トラックではそれ以上の年齢のドライバーも増加しています。
高齢化の主な理由には、若年層の確保ができてないことが挙げられます。物流業界は、長時間労働や不規則な勤務時間が多いというイメージが根強く残っており、それを払拭できていないことから若い世代の新規参入が少ない状況です。
一方で、ベテランドライバーが長年にわたり働き続ける傾向が強く、特に長距離輸送や専門的な運転技術が求められる業務では、経験豊富なドライバーが重宝されています。そのため、年齢を重ねたドライバーが長年現役として活躍し、高齢化が進んでいるのです。社会全体の少子高齢化も影響しており、労働市場全体で若年層の減少が続いていることが、トラック業界にも波及しています。
加齢に伴う運転への影響
トラックドライバーは、長時間の運転や状況判断を求められる職業ですが、加齢に伴い身体機能や認知機能が低下することで、運転に影響が出る可能性があります。高齢ドライバーの安全運転を確保するためには、加齢による変化を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
①視力の低下
加齢により動体視力や夜間視力、深視力(距離感の把握)が低下し、標識や歩行者の発見が遅れるリスクが高まります。特に夜間や悪天候時の運転では、視界が悪くなるため注意が必要です。さらに、白内障や緑内障といった目の病気が進行すると、視野狭窄やコントラスト感度の低下が起こり、事故の危険性が増します。
②反射神経・判断力の低下
年齢を重ねると、ブレーキを踏むタイミングが遅れる、ハンドル操作の反応が鈍くなるなど、とっさの判断や対応能力が低下します。特に交差点や合流地点での判断ミスが増えることで、交通事故のリスクが高まります。また、複数の情報を同時に処理する能力も低下するため、混雑した道路や高速道路での運転が難しくなる場合があります。
③筋力・柔軟性の低下
長時間の運転には、ブレーキやクラッチを踏むための脚力、ハンドルを操作する腕力、適切な姿勢を維持する体幹の筋力が必要です。しかし、加齢によりそれらの筋力が低下し、疲労が溜まりやすくなることで長距離運転の負担が増加します。さらに、関節の柔軟性が失われると、急な操作が難しくなり、安全な運転に影響を及ぼすことがあります。
④認知機能の低下
運転では状況を認識し、適切な判断を下すことが求められますが、加齢とともに記憶力や集中力、注意力が低下することで、運転ミスが発生しやすくなります。また、認知症の初期症状として「信号の変化に気づきにくくなる」「標識の意味を理解するのに時間がかかる」といった影響が現れる場合もあります。
企業に求められる安全対策
高齢トラックドライバーの増加に伴い、企業には安全運転を支援し、事故リスクを軽減するための取り組みが求められています。ここでは、健康管理の徹底、業務の負担軽減、先進安全車両(ASV)の導入といった、企業が実施すべき主要な対策を解説します。
健康管理の徹底
高齢ドライバーが安全運転をするためには、日々の健康管理が欠かせません。加齢による視力や反射神経の低下、生活習慣病のリスク増加を考慮し、企業は定期健康診断や適性検査の強化を行う必要があります。
特に、視力検査や認知機能の評価を含めた定期的なチェックを実施し、必要に応じて運転業務の見直しを行うことが重要です。血圧測定の義務化、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの運転に影響を及ぼす病気のスクリーニングも、事故防止につながる重要な対策となります。
業務の負担軽減
高齢ドライバーが無理なく働ける環境を整えるためには、業務負担の軽減が不可欠です。企業は、労働時間や運行スケジュールを見直し、長時間労働や深夜運転を減らす取り組みを進めるべきです。
例えば、シフトの柔軟化や交代制の導入によって、一人のドライバーにかかる負担を分散させることができます。また、高齢ドライバーに対しては、長距離輸送よりも短距離配送や定期便への配置転換を行い、負担を軽減するといった工夫も考えられます。
荷役作業のサポートを強化し、重い荷物の積み下ろしを減らすことで、身体的な負担を軽減することも大切です。リフトや電動アシスト機器の導入、または荷役専任のスタッフを配置することで、ドライバーが運転に集中できる環境を整えることが重要です。
先進安全車両の導入
高齢ドライバーの安全を確保するためには、運転をサポートする最新の安全技術を搭載した先進安全車両(ASV)の導入が有効です。
例えば、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)や車線逸脱警報(LDW)、車両安定制御装置(ESC)などの機能を搭載することで、ヒューマンエラーによる事故のリスクを低減できます。また、バックモニターや死角検知センサーの導入によって、後方や側方の安全確認をサポートし、運転の負担を軽減することができます。
ドライバーモニタリングシステム(DMS)を活用することで、運転中の眠気や注意力低下を検知し、警告を発することで事故を未然に防ぐことが可能になります。
高齢ドライバーの安全対策は必須
高齢トラックドライバーの安全を確保するためには、企業が積極的に健康管理を支援し、業務の負担を軽減することが重要です。定期健康診断や適性検査の実施、労働時間や運行スケジュールの見直し、荷役作業の負担軽減など、様々な対策が求められます。
また、先進安全車両(ASV)の導入による運転支援技術の活用も有効であり、ヒューマンエラーによる事故を防ぐ手助けとなります。企業がこうした取り組みを進めることで、高齢ドライバーが安心して働ける環境が整い、物流業界全体の安全性向上につながります。