燃料価格の高騰や環境への配慮の観点から、物流業界でも「エコドライブ」が注目されています。トラック輸送は、日々の運行による燃料消費量が多く、運転方法を見直すだけでも大きな効果が期待できます。
今回は、トラックのエコドライブの効果・メリットをはじめ、すぐに実践できる基本テクニックなどを紹介します。
コスト削減はもちろん、車両の長寿命化にもつながるエコドライブを、ぜひ日々の運行に取り入れてみましょう。
エコドライブの効果・メリット
燃費の向上や環境負荷の低減を目的とした運転方法をエコドライブと言います。実践することで、燃料使用量が削減され、CO₂などの温室効果ガスの排出量も抑えられるため、地球温暖化対策に貢献できます。
加えて、無理のない運転が車両への負担を軽減し、部品の劣化を防ぐことでメンテナンスコストの削減や車両寿命の延長にもつながります。また、安全運転につながることから、事故発生リスク低減にも寄与します。
企業にとっては、それらの効果がトータルコストの削減やイメージ向上、さらにはCSR(企業の社会的責任)の取り組みとしても評価されるため、積極的に導入すべき重要な取り組みです。
【エコドライブ】基本的なテクニック
それでは、エコドライブの基本的なテクニックを紹介します。
【エコドライブの基本】
①やさしい発進を心がける
②早めのシフトアップを実践する
③一定速度で走行する
④減速時はエンジンブレーキを活用する
⑤アイドリングストップを徹底する
やさしい発進を心がける
トラックの発進時には、アクセルを強く踏み込まず、おだやかな加速を意識しましょう。目安として、5秒で時速20kmに達する程度の発進が理想とされています。そのような発進方法は、エンジンにかかる負荷を減らし、燃料の無駄遣いを抑えることができます。
また、ディーゼル車は低回転域に最大トルクが設定されているため、平坦な道や下り坂では2速発進やアクセルを踏まないでクラッチをつなぐクリープ発進を活用することで、より効率的でスムーズな走りが可能になります。
加速時のアクセルの踏み込みは、大型車で70~80%、中型車では50%程度を目安に、低速時ほど柔らかく短く行うのが基本ですが、高速道路への合流など迅速な加速が求められる場面では、周囲の状況に応じて安全を最優先に対応することが大切です。
早めのシフトアップを実践する
エンジンの回転数が高いまま低速ギアで走行を続けると燃料消費が増加しますが、早めにシフトアップして高いギアを使用することで回転数が抑えられ、燃費が改善されます。さらに、シフトアップ時は素早く操作することで回転数の低下を防ぎ、無駄な燃料消費を抑えることができます。
エンジン回転計に示される「グリーンゾーン」と呼ばれる適正回転域を意識して運転すれば、より効率的で経済的な走行が可能になります。
一定速度で走行する
燃費の良い走行を実現するためには、アクセル操作は一定を保ちつつ緩やかな速度変化を意識し、車間距離を十分に確保することで波状運転を避けることが重要です。また、排気ブレーキやリターダの常時使用は速度変動の原因となるため必要時以外はオフにし、一般道では40〜60km/h、高速道路では80km/h程度の経済速度を目安に走行しましょう。
上り坂では速度低下前に早めにアクセルを踏み込むことで、不要なギアダウンや燃料消費の増加を防ぐことができます。
減速時はエンジンブレーキを活用する
停止や減速が必要な場面では、前方の信号や車両の動きを予測して早めにアクセルを離し、エンジンブレーキを活用した惰力走行を意識することで、急ブレーキによる燃費悪化を防げます。
減速時にはギアを入れたままクラッチをつないでエンジンブレーキを有効に使い、シフトダウンは必要なタイミングまで遅らせ、最終的な停止はフットブレーキで滑らかに行うことが、経済的かつ安全な運転につながります。
アイドリングストップを徹底する
アイドリングは燃料の無駄遣いにとどまらず、騒音や大気汚染の原因にもなるため、荷物の積み下ろしや休憩、踏切待ちなど、車両を一定時間停止させる場合にはエンジンを切るのが原則です。冷暖房の必要がある場合でも、蓄冷クーラーやエアヒーターなどの補助機器を活用し、暖気運転は最低限にとどめましょう。
また、アイドリングストップは多くの自治体で条例化されており、義務となっている場合もあるため、外部電源利用システムの活用なども含め、環境と燃費に配慮した対応が求められます。
エコドライブを普及させるには?
エコドライブを社内で広く普及させるには、ドライバー一人ひとりの意識向上が不可欠です。そのためには、運転が環境や経済に与える影響を正しく理解できるよう、教育や研修を通じた継続的な啓発活動が重要です。エコドライブのメリットや具体的な実践方法を社内で共有し、運転評価や燃費実績を可視化することで、従業員のモチベーションを高める工夫が求められます。
また、ドライブレコーダーや運行管理システムなどのIT機器を活用することで、運転行動の「見える化」も可能となり、改善に向けた取り組みを効果的に進めることができます。さらに、優良な取り組みに対する表彰制度やインセンティブを導入すれば、全体の意識改革につながります。そうした多角的なアプローチを継続的に行うことが、エコドライブの定着と広がりを促進する鍵となります。
トラックのエコドライブは重要
トラックのエコドライブは、燃費の向上やCO₂排出量の削減といった環境面での効果はもちろん、車両の故障リスクの低減や安全運転の促進にもつながります。さらに、企業にとっては経費削減や社会的信用の向上といったメリットも期待できます。
発進や加速、減速、アイドリングなど、日々の運転で少し意識を変えるだけで効果が得られます。持続可能な物流の実現に向けて、今こそ積極的な取り組みが求められています。
この記事を監修した人

神奈川県出身。株式会社タカネットサービスの9年目の社員。
これまでに監修した記事は200件以上!中古トラックに関する豊富な知識と経験を活かし、中古トラック業界の最新情報やお役立ち情報を発信しています。
実際のトラック販売やメンテナンスにも精通しており、読者にとって有益な情報をわかりやすく提供することを心がけています。
趣味は野球観戦で、休日には球場でリフレッシュするのが楽しみの一つ。
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