乗用車といっしょで、トラックには新車・中古車の分類で分かられます。中でも手の届きやすい中古トラックには独自の耐用年数の計算方法があり、それに応じて購入資金を必要経費として減価償却でき、上手に活用すると節税効果が期待できます。また、中古トラックの負荷をかけない運転、メンテナンスに気を配ることで、長期間乗ることも可能です。
耐用年数って何を表すの?
筆記用具など短い間に消費する消耗品に対し、トラック・普通自動車やパソコンなどの電子機器は複数年にかけて使用します。
もちろん数年で使えなくなりますが、こうした備品・設備を耐久消費財と呼びます。毎年資産価値が目減りしていく耐久消費財は、経理上では購入した時に一括で計上するのではなく、使用年数で分割した金額を、各年度に計上していきます。
これらの備品、設備は使い方や種類によって、いつまで使用できるかが変わってきます。一般的な備品・設備の寿命をもとに、それぞれの使用年数が法律で決められています。
トラックについても耐用年数は国によって定められており、耐用年数期間中はトラックの購入資金を必要経費として減価償却できます。
新車のトラックの耐用年数
耐用年数は、トラックの登録区分、車両区分、ボディタイプにより異なります。新車トラックを購入した場合、資金を経費として計上できる期間は長ければ長いほど助かりますが、トラックの耐用年数は国税庁によって明確に定められています。
自家用トラックの場合
自家用登録のダンプ式トラックは4年
自家用登録のダンプ以外のトラックは5年
となっています。
業務用トラックの場合
業務用登録の最大積載量2トン未満の小型トラックは3年
業務用登録の排気量3,000cc以上の大型トラックは5年
業務用登録のその他のトラックは4年
となっています。
中古トラックの耐用年数はどう違うの?
前述しました国が定めるトラックの耐用年数は、新車で購入した場合のトラックの耐用年数で、中古で購入したトラックに対する耐用年数は新車のものとは異なり、計算が必要になってきます。
その中古トラックの中でも、新車登録後何らかの事情ですぐに売却されて法定耐用年数が残っているものや、法定耐用年数を経過しているものがあります。法定耐用年数が5年の自家用トラックを、新車登録時から3年の状態で中古購入した場合は、耐用年数が2年残っているということになります。
それぞれの計算式の違いを説明します。
耐用年数が全て過ぎている場合の計算方法
新車としてのトラック耐用年数を過ぎた中古トラックを購入した場合、簡便法というざっくりした計算で、新車の耐用年数の20%を中古トラックの耐用年数としています。
耐用年数が5年の場合は、5年×20%=1年となりますが、2年以上の場合は小数点以下切り捨て、2年未満の場合は一律2年となるため、この中古トラックの耐用年数は2年になります。
つまり、どんなに古い年式でも最短の耐用年数が2年になりますので、2年間で減価償却できます。特例として、価格10万円未満の中古車の場合は、1年で減価償却することが可能です。
耐用年数が一部過ぎている場合の計算方法
新車時の耐用年数が一部過ぎている中古トラックでは、簡便法で「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」という計算式で耐用年数を算出します。
新車耐用年数5年のトラックが2年経過している場合、「(5年-2年)+2年×20%=3.4年」
となり、小数点以下は切り捨てられて耐用年数は3年となります。
新車と同様に、2年に満たない場合、耐用年数は2年とされ、小数点以下切り捨てについても同じです。
中古トラックの減価償却方法
前述の耐用年数の説明のところで、期間中はトラックの購入資金を必要経費として減価償却できると言いましたが、減価償却とは、時間が過ぎるとものの価値が減っていくという考え方です。ものの価値が減るということは、経費として計上できるということですので、減価償却は正しく行う必要があります。
減価償却には「定額法」と「定率法」の二つの方法があります。どちらも耐用年数を利用して計算を行います。
定額法
定額法は、購入金額を耐用年数で割った一定額を毎年償却していきます。「購入金額÷耐用年数」という簡単な計算式で毎年の償却額が計算できる分かりやすい減価償却方法です。
(例) 耐用年数が5年の300万円の中古トラックを購入した場合.
300万円÷5年=60万円で、60万円を5年間計上します(最終年度は特別にマイナス1円した額を計上します)。
なお、5年目で計上額から1円を引くのは、資産として1円の車両を残し、対象品が現存することを経理上証明するためのものです。これは、売却や廃棄に出すときに清算することになります。
定率法
定率法では、トラックを購入した初年度に購入した金額のうちの多めの金額を計上し、翌年から段階的に償却額を減少させて経費に計上していきます。経年より資産の価値は低下するため、耐用年数が迫ってきたときには、それに見合った価値を計上します。
余裕があるうちに多めに税金を払っておくことで、買い替えの時期には負担が軽くなるというメリットもあり、多くの法人では定率法を採用しているようです。
減価償却費は、「未償却額(購入金額-減価償却済みの金額の合計)×定率法の償却率」の計算式で算出します。定率法の償却率は「1÷耐用年数×250%」です。
中小企業や個人事業主に対する減価償却の特例とは?
中小・零細企業や個人事業主に対する減価償却特例が存在しており、これをうまく適用すれば、トラックの購入費用を減価償却することができます。
減価償却資金が20万円以下の場合は全額を損金として計上できます。さらに3年間で均等償却することも可能です。また、減価償却資金が30万円未満の場合は取得価格の全額を経費として購入年度に一括計上することが可能です。
新車トラックで購入金額が30万円未満というのはありえない話ですが、中古トラックならば30万円未満で購入して、全額を一括計上で減価償却することは可能です。
これは、中小・零細・個人事業主にとって有利な特例で、中古トラックの購入が節税対策につながります。
耐用年数に関わらずトラックに長く乗るためには?
トラックは、使用すればするほど耐久性が落ちてきます。そこで、耐用年数が過ぎたトラックを長期間乗る方法を説明します。
基本は「負担をかけない運転」と「きめ細かいメンテナンス」に気を配ることです。
特に中長距離を走る前にはしっかり点検することが大切です。
走行距離ごと・毎月1回点検などの決まりを設定しておくとメンテナンスの習慣が自然に身に付きやすくなります。
消耗品の点検を定期的に
●エンジンオイルの交換
エンジンオイルには、潤滑作用・密封作用・冷却作用・洗浄分散作用・防錆作用の5つの役割があります。様々な環境や、高速走行・短距離走行などでエンジンに負担がかかるような状況が続く場合には、早めのオイル交換をお勧めします。
交換の目安 小型トラック:2万kmごと 中型トラック:3万kmごと 大型トラック:4万kmごと |
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その他にも、原動機関係・動力伝達装置関係・走行装置関係・かじ取り装置関係・制動装置関係・燃料装置関係が必要です。
タイヤの適切な交換
大型のトラックの場合、タイヤは重要な部品です。高速道路などの走行中にトラックのタイヤが外れたという事故も起こっています。
ボルトの点検のほか、溝や側面のキズも定期的に点検し、古くなれば交換しましょう。トラックはタイヤの価格も高いので、まだ大丈夫だろうと古いタイヤを使い続けていると、車体に負担がかかり、安全面も問題が生じます。
トラックの過積載に注意
トラッにクは積載量が決まっていますが、これを明らかに超えるともちろん法律違反になります。
積載量を超えなくても、そのギリギリの量まで荷物を載せて毎回走行していると、当然車両に負担がかかり、耐用年数に影響が出てきます。
余裕を持たせて荷物を積載しましょう。
キズの補修とサビの管理
長距離を走ったり、さまざまな荷物を積んだりしますので、車体や荷台に負担がかかり、ちょっとしたキズやへこみができやすくなります。
キズを放っておくと、塗装がはがれてサビが発生し、それが大きくなると車体寿命が短くなります。
キズやへこみはすぐに補修し、サビの元となる汚れや水分は常に落として車体を清掃することが重要です。
寒冷地区で道路にまいてある融雪剤もサビの原因になることがありあます。
トラックに優しく負担をかけない運転
乗用車の場合も同じですが、急発進や急なブレーキは、エンジン、ブレーキ機構にかかる負担が大きく、トラックの寿命を縮めることにつながります。ゆっくり発進し、早めにブレーキを踏む習慣をつけましょう。
また、トラックではマニュアル式シフトがよく見られますが、半クラッチを多く使うとクラッチ板が磨耗する原因になります。さらにクラッチ板から出たゴミがエンジンオイルの汚れにつながる可能性があります。
省エネの風潮のなか、アイドリングストップが一般的になっていますが、寒い地方や冬季に運転する場合は暖機運転も重要です。
エンジンを始動したばかりの時は、エンジンが温まっておらず、急に発進するとエンジンに大きな負担がかかります。暖機運転が長すぎても環境面などから問題がありますので、アイドリングは数分間で充分で、そのあと発進しましょう。
まとめ
中古トラックを上手に利用することにより、大きな節税効果が期待できると言えます。新車としての耐用年数を過ぎても、中古トラックとしての耐用年数の計算方式があり、どんなに古い年式でも最短の耐用年数が2年になりますので、2年間で減価償却が可能です。
比較的コンディションも良いと思われる4年落ちほどの中古トラックを購入して、乗り換えていけば2年間は減価償却でき、節税により効率の良い運営方法となります。
また、負荷のない運転、細かいメンテナンスを行っていくことで、耐用年数に関わらず長期間トラックに乗ることができますので、これらに気を配りましょう。