夏場や冬場の運転中、トラックのエアコンが効かない状態になると、ドライバーにとっては大きなストレスになります。快適な車内環境を保てないだけでなく、集中力の低下や疲労の蓄積にもつながるため、業務に支障をきたす可能性もあります。
「冷たい・暖かい風が出ない」「風は出るけど弱い」といった状態になった場合、考えられる原因は様々です。この記事では、トラックのエアコンの仕組みや、効かない場合に考えられる原因、対処法、故障時にかかる修理費用の相場を解説します。
トラックのエアコンが効かない状況にお困りの場合にはぜひ参考にしてください。
トラックのエアコンの仕組み
それではまず、トラックのエアコンの仕組みから解説します。
冷房の仕組み
コンプレッサーが冷媒ガスを高温・高圧に圧縮し、それをコンデンサーで冷却して液化します。液化した冷媒はリキッドタンクを通って不純物や水分を除去され、エキスパンションバルブで急激に膨張。低温・低圧の霧状になった冷媒がエバポレーター内を通過する際、周囲の熱を吸収して冷たい空気をつくり出します。冷やされた空気はブロワファンによってキャビン内へ送られ、室温が下がります。
暖房の仕組み
一方、暖房は冷媒を使わず、エンジンの冷却水(ラジエーター液)を利用します。エンジンが稼働して温まると、その熱を吸収した冷却水がヒーターコアへと循環。ヒーターコアを通る際に、その熱がブロワファンの風によってキャビン内に送られ、暖房として機能します。エンジン始動直後は温まっていないため、暖房が効くまでに時間がかかるという特徴もあります。
トラックのエアコンが効かない場合に考えられる原因
トラックのエアコンが効かない状態になる原因は様々です。車内が冷えない、暖まらない、風が出ない、異音がするなどの症状が出た場合、それぞれの原因に応じた対応が必要になります。
ここでは、「冷房が効かない場合」「暖房が効かない場合」「共通の原因」に分けて解説します。
冷房が効かない場合
冷媒ガス不足
エアコンの冷却に不可欠な冷媒ガスが不足していたり、ホースや継ぎ目から微量に漏れていたりする場合、冷房の効きが悪くなります。特に経年車では、Oリングの劣化やパイプのひび割れなどにより、知らず知らずのうちにガスが抜けていることが多いです。補充して一時的に冷える場合でも、すぐに効かなくなることもあるため、漏れ箇所の特定と修理が必要です。
コンプレッサーの不具合
エアコンの心臓部ともいえるコンプレッサーが故障すると、冷媒を圧縮できなくなり、エアコンは全く機能しなくなります。コンプレッサー内部の故障が冷媒ラインに金属粉などを回してしまい、他の部品まで故障させることもあるので注意が必要です。
暖房が効かない場合
冷却水不足
冷却水の量が不足していると、ヒーターコアまで十分な熱が伝わらず、温風が出なくなってしまいます。冷却水の漏れや蒸発、点検不足が主な原因となるため、定期的な水位の確認や補充が欠かせません。
サーモスタットの不具合
サーモスタットは、エンジンの冷却水の流れを制御する部品で、エンジンが一定の温度に達するまで冷却水を循環させないようにしています。サーモスタットが開いたままの状態で固着すると、エンジンが十分に温まらず、ヒーターコアに届く冷却水の温度も上がらないため、暖房が効かなくなってしまいます。逆に、閉じたままだとオーバーヒートの原因にもなります。
共通の原因
エアコンフィルターの詰まり
エアコンフィルターがホコリなどで目詰まりを起こしていると、風量が落ちてしまい、エアコンを最大にしても十分な風が出なくなります。特に配送や長距離運転などが多いトラックでは、フィルターの汚れが早く進行する傾向があります。車内環境を快適に保つためにも、半年〜1年を目安にフィルターの点検と交換を心がけましょう。
電装系の異常
エアコンは多くの電装部品で制御されており、ヒューズ、リレー、スイッチ、コントロールユニットなどのいずれかに異常が発生すると、機能しなくなることがあります。
トラックのエアコンが効かない場合の対処法
トラックのエアコンが効かない場合の対処法としては、冷媒ガス・冷却水不足が原因となっている場合にはガソリンスタンドなどで補充してもらうことで一時的に解消することがあります。
ただし、冷媒ガスや冷却水の漏れなどが発生している場合には、それを解決しなければ、再発する恐れが高いため、根本的な不具合を解消するには専門的な点検が必要です。コンプレッサーの故障や電装系のトラブルなど、内部のパーツに関わる問題は、自力では判断が難しい場合もあるため、早めに専門的な点検を依頼しましょう。
エアコンの不調を放置すると、快適性が損なわれるだけでなく、運転中の集中力や体調にも悪影響を及ぼすおそれがあるため、早期対応が安全運転のためにも重要です。
トラックのエアコンの修理費用の相場
トラックのエアコンが効かなくなった場合、その修理費用は原因によって大きく異なります。ここでは代表的なトラブル別に、目安となる修理費用の相場を紹介します。
冷媒ガス・冷却水不足の不足・漏れが原因の場合は、比較的軽度の修理で済むケースが多く、補充のみであれば5,000円〜1万円程度。ただし、漏れ箇所の特定や部品交換が必要になると、2〜5万円程度になることもあります。
コンプレッサーの故障は、エアコン系統の中でも高額な修理に分類されます。新品に交換する場合、部品代と工賃を含めて5万〜10万円が相場です。サーモスタットの交換にかかる費用は1万~2万円程度です。
エアコンフィルターの詰まりによる不具合であれば、1万〜1万5,000円程度が一般的です。定期交換で予防できるため、メンテナンスの一環として取り入れるとよいでしょう。
電装系の異常(ヒューズ切れ・配線トラブルなど)については、軽微なものであれば数千円〜1万円程度で修理が可能です。ただし、電装品の広範囲にわたる不具合や原因の特定に時間がかかるケースでは、数万円ほどかかることもあります。
トラックのエアコンが効かない場合には
トラックのエアコンが効かない原因には、冷媒ガス・冷却水の不足やコンプレッサー、サーモスタットの不具合、フィルターの詰まり、電装系の異常などがあり、原因ごとに修理費用も異なります。エアコンは快適な運転環境を保つために欠かせない設備のひとつです。早めに対応することで、修理コストを抑えられる可能性もあります。
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この記事を監修した人

神奈川県出身。株式会社タカネットサービスの9年目の社員。
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