昨今、トラックドライバーの人材不足は大きな社会問題です。その背景には、「拘束時間が長そう」「体力的に負担が大きそう」などと運送業に対するマイナスのイメージが強く関係していると考えられます。
今回の記事では、トラックドライバー不足の現状と要因について触れた後、運送業が利用できる人材確保・育成関連の助成金・補助金情報について解説します。
トラックドライバー不足の現状と原因
厚生労働省の統計によれば、物流分野における人材不足は近年顕在化しており、トラックドライバーが不足している状況です。2028年には約27.8万人のドライバー不足が予想されるなど、運送事業者が置かれている状況は非常に厳しいといえるでしょう。
また、トラック運送事業を含む自動車運送事業は中高年層の男性労働力に強く依存しています。実際、令和4年では40歳未満の若い就業者数が全体の23.9%であるのに対し、40歳以上50歳未満は27.4%、50歳以上では48.8%を占めていることがわかります。中長期的に見て、高年齢就業者の割合が急速に高まる一方、若手および中堅層が極端に足りないといった、年齢構成のゆがみが生じる可能性が非常に高いといえるでしょう。
※出典:日本のトラック運送産業現状と課題2023|公共社団法人全日本トラック協会
トラックドライバーは「労働時間が長そう」「業務負荷がすごそう」などと、世間一般から労働環境があまりよくないイメージを抱かれていることもあり、人材確保が容易ではない点も課題のひとつです。少子高齢化に伴う働き手の減少も相まって、早急な対策を講じる必要があります。
※出典:公益社団法人全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2023」
※出典:国土交通省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」
【トラックドライバー】運送業が使える助成金・補助金情報
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の社会の変化に対応するために、思い切った事業再構築へ向けて舵を切ろうとしている中小企業を対象とした補助金のことです。
”本事業は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業・業種転換、事業再開、国内回帰又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。
事業再構築補助金 公募要領より引用”
以下5つの枠組みに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なります。
事業類型 | 補助上限額 (※従業員30人の場合) |
補助率 |
成長分野進出枠(通常類型) | 3,000万円 (※4,000万円) |
中小 1/2(※2/3) 中堅 1/3(※1/2) |
成長分野進出枠(GX進出類型) | 中小:5,000万円(6,000万円) 中堅:1億円(※1.5億円) |
中小 1/2(※2/3) 中堅 1/3(※1/2) |
コロナ回復加速化枠(通常類型) | 2,000万円 | 中小 2/3 中堅 1/2 |
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型) | 1,500万円 | 中小 3/4(※2/3) 中堅 2/3(※1/2) |
サプライチェーン強靱化枠 | 3億円(※5億円) | 中小 1/2 中堅 1/3 |
補助金概要について、詳しくは公式サイトで確認できます。
ものづくり補助金
物作り補助金とは、中小企業等による生産性向上に繋がる革新的なサービス開発、試作品開発、生産プロセスの改善をおこなうための設備投資を支援する補助金のことです。物作り補助金の対象は多岐にわたり、さまざまな業種にとって活用しやすい点がメリットといえます。
■新:ものづくり補助金2024
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業「1 8 次公募要領 概要版」|ものづくり補助金事務局
補助金概要について、詳しくは公式サイトで確認できます。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業等が生産性向上に役立つITツールを導入する際の経費を一部補助する制度のことです。2024年度のIT導入補助金では補助率が次のようになっているほか、補助額の最大は450万円となっています。
通常枠 | 購入費用の1/2以内 |
インボイス枠 | 購入費用の1/2~4/5以内 |
補助金概要について、詳しくは公式サイトで確認できます。
トラックドライバー不足を解消するために
今回の記事では、トラックドライバーの人材不足の現状と要因、運送業が使える助成金・補助金情報についてお伝えしました。
人材不足を解消するためには、まず働きやすい環境を整えることが欠かせません。企業が労働環境を整えることはそう簡単なものではありませんが、今回の記事で紹介したような助成金や補助金を活用し、少しでも改善に向けて努力を進めることが大切です。
また、自治体によっては独自の補助金・助成金制度を打ち出しているところもあるため、一度調べてみるのもよいでしょう。