近年、物流業界でコンプライアンス強化の流れが加速するなかで、「白トラ」と呼ばれる違法な有償運送への規制が大きく見直されています。これまで一部の事業者の問題として捉えられてきた白トラですが、法改正により荷主企業にも責任が及ぶ仕組みとなり、その影響は業界全体へと広がりつつあります。
今回の記事では、白トラ規制の基本的な情報から、規制強化の背景、具体的な内容や企業への影響、求められる対策などを解説します。
白トラ規制とは?
白トラ規制とは、貨物自動車運送事業法に基づく許可を受けていない白ナンバー車両による有償貨物運送(いわゆる「白トラ」)を取り締まるための制度です。本来、有償で貨物を運送する場合は緑ナンバー(営業ナンバー)の取得が必要であり、安全管理体制や運行管理、労働条件など一定の基準を満たすことが義務付けられています。
それに対し、無許可で運送を行う白トラは、本来受けるべき規制を受けていないため、公正な競争環境を損なうだけでなく、安全面や労働環境の観点からも問題視されてきました。
規制強化の背景
白トラ問題が注目されるようになった背景には、物流業界における慢性的な人手不足やコスト削減圧力の高まりがあります。許可を持たない白ナンバー車両による有償運送は、正規の事業者よりも運賃が低く設定されるケースが多く、適正な運賃水準の維持を困難にする要因となってきました。
また、緑ナンバー事業者に課されている安全管理や労働条件の確保といった義務を負わないため、ドライバーの過重労働や安全対策の不備につながるリスクもあります。そうした状況は、業界全体の健全な発展を阻害する要因となることから、規制強化の必要性が高まったのです。
白トラ規制の詳細

令和7年6月に公布された「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」のうち、白トラ規制に関連する規定は令和8年4月1日に施行されました。
ここでは、改正法の主な内容を解説します。
違法な白トラの利用禁止と荷主等への取締り
改正法により、無許可でトラック運送事業を営む者(白トラ)への運送委託が禁止され、違反した場合は100万円以下の罰金の対象となります。これまでは違法な白トラで運送した側のみが処罰対象であり、荷主側は幇助犯・共同正犯等の共犯関係にある場合に限り処罰対象とされていましたが、今後は荷主側が違法な白トラと認識して発注しただけで違法となり得ます。
また、違法な白トラに関わっているおそれや疑いのある荷主等に対しては、トラック・物流Gメンによる是正指導が行われます。具体的には、当該行為をしているおそれがあると認められる場合は国土交通大臣から荷主等への要請が、疑うに足りる相当な理由がある場合には勧告・公表が実施されます。
委託次数の制限
トラック運送事業者および貨物利用運送事業者は、元請として運送を引き受ける場合、再委託の回数を2回以内に制限するよう努力義務が課されます。元請事業者を「ゼロ次」とした場合、「2次請け」=再々委託までに制限するルールとなっており、一般貨物運送事業者だけでなく、貨物利用運送事業者(第一種自動車・第二種集配)、軽貨物運送事業者、特定貨物運送事業者にも適用されます。
運送契約書面の交付義務・実運送体制管理簿の作成義務の対象拡大
従来は元請である一般貨物自動車運送事業者のみが対象だった運送契約書面の相互交付義務および実運送体制管理簿の作成義務が、元請となる貨物利用運送事業者にも新たに課されます。
交付書面には運送役務の内容・対価、荷役作業・附帯業務の内容・対価、運送契約当事者の氏名・住所、運賃・料金の支払方法などを記載することが必要で、交付した書面の写しは1年間保存する義務があります。なお、書面の交付はメール等の電磁的方法でも対応可能です。
白トラ規制の影響と対策

荷主・物流事業者を問わず幅広い企業が白トラ規制の影響を受けることになります。自社への影響を正しく把握したうえで、早急に対策を講じることが重要です。
企業への影響
今回の規制強化で最も大きな影響を受けるのは、これまで意図的・無意識を問わず違法な白トラ事業者に運送を委託していた荷主企業です。改正法の施行以降は、違法な白トラ事業者への運送委託が処罰の対象となるため、取引先の運送事業者が適切な許可を持っているかどうかを確認する義務が実質的に生じます。
また、多重下請け構造の物流事業者にとっては、委託次数の制限(再委託2回以内の努力義務)への対応が求められます。これまで複数の中間業者を介して運送を委託していた場合、サプライチェーン全体の見直しが必要となるケースも出てくるでしょう。
さらに、貨物利用運送事業者には書面交付義務等が新たに課されるため、契約手続きの整備や管理コストの増大も想定されます。
加えて、規制の強化により違法な白トラ事業者が市場から排除されることで、輸送を担う緑ナンバー車両の確保が従来よりも困難になる可能性があります。需給バランスの変化により車両不足や配送の遅延が生じるリスクも考えられるでしょう。
具体的な対策
取引先の許可状況の確認
荷主企業がまず取り組むべきことは、現在運送を委託している事業者が貨物自動車運送事業の許可(緑ナンバー)を適切に取得しているかを確認することです。
取引先に対して許可証の提示を求めるとともに、国土交通省が公開している事業者情報を活用して確認する体制を整えることが重要です。
契約内容・取引フローの見直し
委託次数の制限に対応するため、現在の物流フローにおける下請け・再委託の構造を把握し、再委託の回数が2回以内に収まるよう取引フローを見直すことが求められます。
また、貨物利用運送事業者は運送契約締結時の書面交付に対応できるよう、契約書式や手続きの整備を進めておく必要があります。
自社での車両調達の検討
規制強化により緑ナンバー車両の需給が逼迫することも想定されるため、外部委託に頼りすぎず、自社で緑ナンバー車両を保有・確保することも有効な対策のひとつです。
自社車両を持つことで、委託先の許可状況に左右されずに安定した輸送体制を維持できるほか、コスト管理や品質管理の面でもメリットが生まれます。
白トラ規制について
令和8年4月1日に施行された白トラ規制により、違法な白トラ事業者への運送委託が処罰の対象となるなど、荷主企業を含む幅広い事業者に新たな義務が課されています。施行されたばかりの今、取引先の許可状況の確認や契約フローの見直し、社内のコンプライアンス体制の整備など、早急な対応が求められます。
物流業界全体の適正化と持続可能な輸送体制の構築に向けて、自社の取引状況を改めて点検し、法令に沿った運送委託の仕組みを整えることが大切です。
この記事を監修した人
トラックランド管理人:高良
神奈川県出身。株式会社タカネットサービスの9年目の社員。
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実際のトラック販売やメンテナンスにも精通しており、読者にとって有益な情報をわかりやすく提供することを心がけています。
趣味は野球観戦で、休日には球場でリフレッシュするのが楽しみの一つ。
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