お歳暮シーズンなど、冷凍食品や生鮮品の輸送が増える時期に「冷凍車が思うように冷えない」というトラブルが発生すると、品質低下や納期遅延といった大きな問題につながりかねません。そうした事態が発生した際に迅速に対応するためには、まず原因を特定することが重要です。
この記事では、冷凍車の仕組みをはじめ、冷えない場合に考えられる主な原因と、その対処法、修理費用などについて解説します。冷凍車が冷えない状況にお困りの方はぜひ参考にしてください。
冷凍車の仕組み
車両に搭載された冷凍ユニットによって荷室内の温度を一定に保つことができる冷凍車。基本構造は「コンデンサー(凝縮器)」「エバポレーター(蒸発器)」「コンプレッサー(圧縮機)」「ターボファン(送風機)」「コントローラー」の5つから成り、冷媒ガスが循環することで荷室の熱を外部に放出します。
コンプレッサーで圧縮された冷媒は高温高圧のガスとなり、コンデンサーで冷却・液化され、エバポレーターで再び気化する際に周囲の熱を吸収し、荷室内を冷却しています。
冷凍方式には種類があり、主に「機械式」「液体窒素式」「蓄冷式」に分けられます。機械式は車両のエンジンの動力を利用して荷室を冷やす方式で、温度を細かく調整できるのが特徴です。液体窒素式は、液体窒素の気化熱を利用して急速に庫内を冷却する方法で、−40℃前後まで温度を下げられるため、高鮮度輸送に適しています。
蓄冷式は停車中に電力で冷却板を凍結させ、走行中はその冷気を利用して温度を保つ方式で、省エネ性に優れる一方、長距離輸送にはやや不向きです。
また、冷凍機の動力源にも種類があります。エンジン直結式は走行中の冷却性能が高いものの、エンジン停止中は稼働できません。一方、サブエンジン型は独立したエンジンを搭載し、停車中でも庫内温度を維持できるため、長距離輸送や荷待ち時間が長い業務に適しています。
冷凍車が冷えない場合に考えられる原因と対処法

冷凍車が冷えない不具合が生じた場合に考えられる原因として「温度設定ミス」「ドアの不具合」「霜の付着」「冷却装置の故障」などが挙げられます。
その詳細や、対処法などを解説します。
温度設定ミス
冷えない原因として意外と多いのが、温度設定の誤りです。運転前に設定温度を確認せずに出発して、想定していた温度よりも設定温度が高い場合に「冷えない」という勘違いが起こり得ます。
特に荷物ごとに適温が異なるような多品目を扱う配送では、設定の確認漏れが起こりやすくなります。そのような場合には、温度設定の確認を習慣付けたほうが良いでしょう。
ドアの不具合
冷凍車のドアに隙間や閉まり不良があると、外気が侵入して庫内温度が上昇し、十分に冷えないことがあります。特に、ドアパッキン(ゴムパッキン)の劣化や損傷、ヒンジの歪みなどによって密閉性が低下すると、冷気が漏れ出しやすくなります。また、積み下ろし時にドアを長時間開けたままにすることも、温度上昇を招く要因です。
対処法としては、まずドア周辺の密閉状態を目視で確認し、ゴム部分のひび割れや変形があれば早めに交換します。ヒンジの緩みや変形がある場合は調整を行い、ドアが確実に閉まるようにする必要があります。冷えない状況で、ドアの開閉時に異音や重さを感じたら、早めに整備を依頼したほうが良いでしょう。
霜の付着
庫内のエバポレーター(蒸発器)や冷却フィンに霜が付着すると、冷気の循環が妨げられ、冷却効率が低下します。特に湿度が高い状態でドアの開閉を繰り返すと外気が流入し、水分が凍りついて霜が発生しやすくなります。霜が厚くなると冷風の通り道を塞ぎ、設定温度まで下がらなくなることも少なくありません。対処法としては、まず庫内の電源を切り、ドアを開けて自然解凍を行います。
無理に氷を削るとフィンやセンサーを傷つける恐れがあるため注意が必要です。また、頻繁に霜が発生する場合は、ドアパッキンの劣化や排水不良なども疑われます。定期的な除霜とともに、湿気の多い環境ではドアの開閉時間を最小限に抑える工夫をすることも大切です。
冷却装置の故障
冷凍車が冷えない場合、冷却装置そのものに不具合が生じている可能性もあります。主な原因として、コンプレッサーの故障、冷媒ガスの漏れ、ファンモーターの不具合などが挙げられます。コンプレッサーが正常に作動しないと冷媒の圧縮・循環ができず、庫内の温度は下がりません。
また、冷媒ガスが不足すると冷却能力が著しく低下し、設定温度に達しにくくなります。さらに、ファンに不具合が生じている場合は冷気が均一に行き渡らず、部分的な温度ムラが発生します。
対処法としては、まず異音や振動、エラー表示の有無を確認し、異常が見られる場合は速やかに使用を停止しましょう。冷媒の補充や部品交換は専門的な知識を要するため、冷凍機メーカーや整備業者に点検・修理を依頼する必要があります。
冷凍車の修理費用について

冷凍車の修理費用は、故障の内容や部品交換の有無によって大きく異なります。軽微なトラブルであれば1~3万円程度で修理できる場合もありますが、主要部品の交換が必要な場合は高額になりがちです。
例えば、冷凍機本体の故障やコンプレッサーの交換には10万~30万円程度、冷媒ガスの漏れ修理や補充は2万~5万円程度です。ファンモーターやセンサーなどの電装系トラブルは、部品代と工賃を合わせて3万~10万円ほどかかるケースが多く見られます。
定期的なメンテナンスを行い、早い段階で異常に気づくことができれば、大規模な修理を避けられる可能性が高まります。特に繁忙期やお歳暮シーズン前には、冷却性能の点検を行うのが望ましいでしょう。
冷凍車が冷えない場合には
冷凍車が冷えない原因としては、温度設定のミスやドアの不具合、霜の付着、冷却装置の故障などが考えられます。わずかなトラブルでも輸送品質に大きく影響することがありますので、日常点検を怠らず、異常を感じた際は早めに原因を特定し、適切な対処を行うことが大切です。
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この記事を監修した人
トラックランド管理人:高良
神奈川県出身。株式会社タカネットサービスの9年目の社員。
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