近年、環境意識の高まりとともに、次世代のエネルギーを活用した車両が注目を集めています。中でも、水素を燃料とするトラックは、新たな物流の形として関心を集めている存在です。地球環境への配慮やエネルギー転換が求められるなか、企業や自治体では様々な取り組みが行われています。
今回の記事では、水素トラックの定義をはじめ、注目されている背景やメリット・デメリットなどを解説します。水素トラックや、物流・運送業界に起きている変化を知りたい方は、ぜひご覧ください。
水素トラックとは?
水素を燃料として走行する次世代型の商用車のことです。ガソリンや軽油の代わりに水素を燃料電池で化学反応させて電気を生み出し、その電力でモーターを駆動します。つまり、エンジンではなく電気モーターで走る「燃料電池車(FCV)」です。
近年では、トヨタや日野、いすゞなどの国内メーカーをはじめ、欧米の自動車メーカーでも開発が進められており、物流業界での導入が少しずつ広がりつつあります。
注目されている背景
水素トラックが注目されている背景には、脱炭素化への世界的な動きと、物流業界における環境負荷低減の必要性があります。近年、地球温暖化対策としてCO₂排出量の削減が急務となっており、自動車分野ではガソリン・ディーゼル車に代わる新しいエネルギー車の導入が求められています。
特に物流や輸送分野は、経済活動を支える一方で排出量が多く、電気トラックでは航続距離や充電時間に課題が残るため、短時間でエネルギー補給が可能な水素トラックが有力な選択肢として期待されています。
また、国や自治体も水素社会の実現を目指し、水素ステーションの整備や導入補助金などの支援を強化しています。それらの政策的な後押しもあり、今後の商用車市場での拡大が見込まれています。
EVトラックと比較
EVトラックとは、電気を動力源としてモーターで走行する「電気トラック」のことです。車両に搭載されたバッテリーに電力を蓄え、走行中はモーターを駆動させることでエンジン車と同様に荷物を運搬できます。走行時にCO₂を排出せず、騒音が少ないこともあり都市部や短距離配送での導入が進んでいます。
水素トラックは「燃料電池」を使って車内で電気をつくりながら走行する点でEVトラックと異なります。そのため、EVトラックが都市圏での配送や短距離輸送に向いているのに対し、水素トラックは長距離輸送や大型車両に適したトラックとして位置づけられています。
水素トラックのメリット・デメリット

水素トラックのメリット・デメリットを解説します。
メリット
最大のメリットは、走行時にCO₂や排気ガスを一切出さない環境性能の高さです。燃料電池で水素と酸素を反応させて電気を作り、その電力でモーターを動かす仕組みのため、排出されるのは水のみ。地球温暖化対策や企業の脱炭素経営の推進につながるのは大きなメリットです。
また、燃料補給時間が短く、長距離走行が可能な点も大きな特徴です。EVトラックのように充電に数時間を要することがなく、数分で水素を充填できるため、輸送効率を落とさずに運用できます。さらに、電気トラックに比べて外気温の影響を受けにくく、冬場でも安定した出力が発揮されるのも特徴です。
走行時の静粛性が高く、振動も少ないため、ドライバーの疲労軽減にもつながります。将来的には水素インフラの整備が進むことで、より実用性の高い次世代の物流手段として広く普及していくことが期待されています。
デメリット
一方で、水素トラックにはいくつかの課題もあります。最大のデメリットは、導入コストとインフラ面です。燃料電池システムや水素タンクなどの高価な部品を搭載しているため、車両価格が高く、現時点ではディーゼルトラックに比べて数倍のコストがかかります。
また、水素ステーションの数が限られており、燃料補給ができる場所が少ない点も大きな課題です。距離輸送を行うトラックの場合、ルート上で水素補給が難しい地域も多く、運用が制限されます。
水素の製造・輸送にもエネルギーが必要であり、現状では再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」が普及していないため、全体としてのCO₂削減効果が限定的という指摘もあります。それらの課題を解決するためには、技術革新とインフラ整備の両面での進展が求められます。
【水素トラック】車両紹介

最後に、最近注目を集めている日野自動車の燃料電池大型トラック「日野プロフィア Z FCV」を紹介します。
日野自動車とトヨタ自動車が共同開発した国内初の量産型燃料電池大型トラックです。トヨタの燃料電池車「MIRAI」に採用されているFCスタックを大型商用車向けに改良したユニットを2基搭載。わずか15〜30分で水素充填が可能で、最大航続距離は約650kmと、長距離幹線輸送にも十分対応できる性能を備えています。
車体は大型トラック「日野プロフィア」をベースに、燃料電池車専用に最適化された設計で、高圧水素タンク6基を搭載し、積載性と安全性を両立しています。架装はドライバン・ウイングバン仕様に対応し、様々な物流現場での運用が可能です。
また、導入初期の負担を軽減するためにフルメンテナンスリース形式で提供され、定期的な点検・整備を含めてサポートを受けられます。2025年10月に販売がスタートしており、政府の「燃料電池商用車重点地域」(関東・中部・近畿など)を中心に展開が予定されています。
このようなトラックの登場は、日本の物流分野における水素社会実現への大きな一歩であり、今後の商用車市場の電動化を牽引する存在として期待されています。
参考:日野自動車、燃料電池大型トラック「日野プロフィア Z FCV」新発売
水素トラックについて
水素トラックは、環境負荷を大幅に抑えられる次世代の商用車として、物流業界でも注目が高まっています。走行時にCO₂を排出せず、燃料補給時間も短いため、持続可能な輸送手段として大きな可能性を秘めています。一方で、水素ステーションの整備や車両コストなど、課題も残されており、今後の技術革新とインフラ拡充が求められています。
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この記事を監修した人
トラックランド管理人:高良
神奈川県出身。株式会社タカネットサービスの9年目の社員。
これまでに監修した記事は200件以上!中古トラックに関する豊富な知識と経験を活かし、中古トラック業界の最新情報やお役立ち情報を発信しています。
実際のトラック販売やメンテナンスにも精通しており、読者にとって有益な情報をわかりやすく提供することを心がけています。
趣味は野球観戦で、休日には球場でリフレッシュするのが楽しみの一つ。
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