物流や建設など社会のあらゆる場面で欠かせない存在のトラック。その心臓部ともいえるのがエンジンであり、性能や仕組みを理解することは、安全性や効率性を確保するうえで重要な意味を持ちます。
普段から運転や管理に携わる方が、エンジンに関する基本的な知識を知っておくことで、車両を有効活用することができるでしょう。
今回の記事では、「トラックのエンジン」をテーマに、特徴や仕組み、関連用語について解説し、起こり得るトラブルなども紹介します。
トラックのエンジンの特徴・仕組みは?
現在、事業用トラックの多くは、ディーゼルエンジンが搭載されています。ディーゼルエンジンは、圧縮した高温の空気によって燃料を自然着火させる仕組みで、点火プラグを必要としません。その燃焼方式により、低回転からでも強い力を生み出せるのが特徴です。そのため、重量物を積載して発進するトラックに適しており、坂道や長距離輸送でも安定した走行ができます。
また、ディーゼルエンジンは燃費効率に優れ、二酸化炭素の排出量が少ない点も特徴です。一方で、窒素酸化物や粒子状物質の排出が課題となるため、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)や尿素SCRシステムなどの排ガス浄化装置が搭載されています。
ガソリンエンジンとの違い
ガソリンエンジンは、燃料と空気を混合した「混合気」に点火プラグで火花を飛ばし、燃焼させる仕組みです。その点火方式によって、エンジンの始動が容易で、振動や騒音も比較的少なく、乗用車を中心に幅広く使われています。
一方で、トラックのように重量物を積んで低い回転数で力強く走る用途には不向きな面があります。燃費効率もディーゼルに比べて劣り、長距離輸送や重い荷物を扱う場面では経済性に課題が残ります。そのため、乗用車にはガソリンエンジンが主流ですが、事業用トラックにはディーゼルエンジンが選ばれることが多いのです。
エンジンの馬力・トルク・回転数とは?
エンジンの性能を理解するうえで欠かせないのが「馬力」「トルク」「回転数」です。それらは、トラックの走行性能や燃費、運搬能力に関係しています。
以下では、それぞれの意味や影響などを解説します。
馬力
エンジンが生み出す「仕事量の大きさ」を示す指標です。単位時間あたりにどれだけのエネルギーを発揮できるかを表しており、高速走行や加速性能を左右します。一般的に、馬力が大きいエンジンほどスピードを出しやすく、坂道や高速道路での追い越しもスムーズに行えます。トラックの場合、荷物を積んで長距離を走行する際に馬力が不足すると走行に余裕がなくなり、燃費にも影響します。
トルク
「回転力」を意味し、エンジンがどれだけ強い力でタイヤを回せるかを示す数値です。トラックにおいては特にトルクが重視され、トルクが大きいほど、重量のある荷物を積んだ状態でもスムーズに発進でき、坂道でも力強く走ることができます。また、低回転で高トルクを維持できるエンジンは燃費効率にも優れており、経済性の面でもメリットがあります。
回転数
エンジンのクランクシャフトが1分間に何回転するかを示す数値(rpm:revolutions per minute)です。エンジンの回転数は馬力やトルクの発生状況と密接に関係しており、高回転になれば馬力は増しますが、燃料消費量も増加します。
一方で、低回転での運転は燃費が良く、ディーゼルエンジンが得意とする領域です。トラックの場合、エンジンの回転数を適切にコントロールすることで、積載時の走行安定性や燃費性能を両立させることができます。運転時にはトルクが最も効率よく発揮される「トルクバンド」と呼ばれる回転域を意識することが、効率的な走行につながります。
トラックのエンジンで起こり得るトラブル
長時間の走行や重量物の積載などを日常的に行うトラックにおいては、様々なトラブルが発生することがあります。
ここでは代表的なトラブルや、その原因や注意点などを解説します。
エンジンがかからない・始動しにくい
エンジンがかからない場合、まず疑われるのはバッテリー上がりやセルモーターの不具合です。また、ディーゼルエンジンでは燃料フィルターの詰まりやグロープラグの故障が原因となることもあります。寒冷地では燃料の凍結も要因となるため、定期的な点検が欠かせません。
黒煙・白煙の発生
排気ガスに黒煙が混じる場合は、燃料が不完全燃焼を起こしているサインです。インジェクターの噴射不良やエアフィルターの詰まり、燃料過多などが原因として考えられます。一方、白煙は冷却水が燃焼室に混入している、または未燃焼燃料が多い場合に発生します。ガスケットの損傷や噴射タイミングのズレが背景にあることも多く、早期の修理が必要です。
異音や振動の増加
エンジンからの異音は、ベルトの摩耗やテンショナーの不良、ピストンやバルブの摩耗など多岐にわたります。異常な金属音や打音は重大な故障の前触れであることが多く、放置するとエンジン内部の損傷につながります。また、エンジンマウントの劣化によって振動が強くなるケースもあり、快適性だけでなく安全性にも影響を及ぼします。
オーバーヒート
冷却系統の不具合によって発生するオーバーヒートは冷却水不足、ラジエーターの詰まり、ウォーターポンプやサーモスタットの故障などが主な原因です。温度上昇を放置するとシリンダーヘッドの歪みやエンジン焼き付きに直結し、高額な修理が必要になる場合があります。日常的に冷却水の量やラジエーターの状態を点検することが予防につながります。
出力低下・加速不良
積載時に力が出ない、加速が鈍いといった症状は、燃料噴射系の異常やターボチャージャーの不具合、吸気系統の詰まりなどが原因として考えられます。ディーゼルエンジンでは、EGR(排気ガス再循環装置)の汚れやDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)の詰まりが原因で出力低下につながることもあります。
トラックのエンジンについて
トラックのエンジンは、低回転から強い力を発揮できるディーゼル方式が主流であり、燃費性能や耐久性にも優れています。馬力・トルク・回転数といった要素は走行性能や燃費効率に直結し、用途や運行環境に応じた適切な理解と管理が不可欠です。
定期的な点検や適切なメンテナンスを行うことで、エンジン性能が最大限に発揮され、安全で効率的な運行を実現することができます。
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この記事を監修した人

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