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まなびのコラム

物流業界における「荷待ち時間」の発生原因と改善のための取り組み

物流業界は現在、いわゆる「2024年問題」に直面しており、新たに施行される労働規制によって予想される輸送能力の不足と、それに伴う物流業界全体の効率性の低下が懸念されています。

その中でドライバーの長時間の荷待ちは、効率化を妨げる大きな原因となるため、物流業界で問題視されている課題の一つです。

本記事では、物流業界における荷待ちの現状や影響、発生する潜在的な原因を掘り下げ、また2024年問題に向けた具体的な国の取り組みについても触れていきます。

荷待ち時間の現状と影響

国土交通省が発表している「トラック輸送状況の実態調査結果(概要版)」「R3年度トラック輸送状況の実態調査結果(全体版)」によるとトラック1運行あたりの荷待ち時間は平均1時間34分であり、荷待ち1回あたりの平均時間は1時間13分です。

特に紙・パルプ、家電・民生用機械、機械ユニット・半製品、空容器・返回送資材、医薬品といった品目で荷主都合による荷待ち時間が長い傾向にあります。

運送現場では73.4%が荷待ち時間の発生を認識していますが、元請けでは54.8%、荷主では約20%と認識に大きな差があるのが特徴的です。

また、荷待ち時間の有無はドライバーの拘束時間にも影響を及ぼしており「荷待ち時間がない運行」の平均拘束時間は10時間38分ですが、「荷待ち時間がある運行」では平均拘束時間が12時間26分に上昇し、ドライバーの労働時間が長くなることが明らかになっています。

ドライバーの荷待ち時間が長くなることは、業務効率の低下に直結します。1日あたりの配送数や作業効率が低下し、物流業界全体の生産性にも悪影響を与えます。

また、荷待ち時間の長さは運転手の労働条件にも影響を及ぼし、長時間の無駄な待機は労働環境を悪化させ、運転手のストレスや疲労を増加させる要因ともなります。

このような状況は、労働環境の満足度や健康に影響を及ぼし、結果としてドライバー不足という問題をさらに悪化させる可能性もあります。

2024年問題が間近に迫り、ドライバー不足が深刻な懸念材料になっている物流業界では、効率化の必要性がこれまで以上に高まっており、業界全体における荷待ち時間削減への取り組みは、効率化を達成するために不可欠な要素です。

荷待ち時間の記録義務について

平成29年7月から荷待ち時間の実態把握と荷主への対策を促進することを目的として省令改正が施行されています。

車両総重量が8トン以上、または最大積載量が5トン以上のトラックに乗務するドライバー毎に、集貨地点や配達地点における荷積みや荷卸しの開始及び終了時刻、さらには到着時刻を記録し、これを1年間保存することが義務付けられています。

待機時間の主な発生原因

ドライバーの待機時間が発生する原因としては主に以下のことが挙げられます。

・倉庫オペレーションの問題
・ITシステムの導入や活用不足

実態調査によると、荷待ち時間の発生理由の中で最も多いのは「出荷体制が整っていないため」という回答です。これに次いで多いのが「受付や指定時間が集中する時間帯のため」という理由です。

このことから、荷待ち時間の主な原因は、倉庫のオペレーションに問題があることや、ITシステムの導入及び活用不足にあると考えられます。出荷体制の問題は、荷物の準備や整理が適切に行われていないことが原因であり、一方で受付時間の集中は、効率的なスケジューリングや情報管理の不足を示しています。
したがって、これらの問題を解決するためには、マニュアルの改善や、レイアウトの見直し、機材・設備の導入、ITシステムの積極的な導入と活用などが求められます。

一例として、トラック予約受付システムの導入は、待機時間の削減につながる効果的な方法です。

予約受付システムを活用することで、トラックの到着時間が事前に予測可能となり、それに応じて荷積みや荷卸しの準備を効率的に行うことができます。また、トラックの到着が分散され、ドライバーが荷物の積み下ろしを待つ時間が大幅に減少します。

実際にこのようなシステムの導入によって、トラック一台あたりの平均待機時間が約70%削減したという効果も報告されています。

参考:物流ニュース 損保ジャパン

改善に向けた国の取り組み

厚生労働省は令和4年12月「改善基準告示」(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)の改正と同時に、トラックドライバーの長時間労働の是正と健康な労働環境の確保を目的として「荷主特別対策チーム」を編成しました。

これにより労働基準監督署が発着荷主等に対し、長時間の荷待ちの改善、運送業務の発注担当者に改善基準告示を周知し、トラックドライバーの労働条件改善に協力を要請することができます。

また荷主が長時間の荷待ちを発生させていると疑われる事案の情報を収集するためのメール窓口を設置し、収集した情報を基に労働基準監督署が対応を行う体制を整えています。

このようにドライバーの待機時間の改善に関しては、国をあげての取り組みが行われているのです。

参考:改善基準告示の改正に伴い「荷主特別対策チーム」を編成しました

問題を解消するために

2024年問題に直面している物流業界は「ドライバーの長時間の荷待ち問題」の解決を喫緊の課題として取り組む必要があります。

長時間の荷待ちは、ドライバーの労働環境を悪化させるだけでなく、トラックの効率的な運用を阻害する要因となっています。この問題は荷主企業、運送業者、倉庫業者などの各業者が密接に連携し、積極的に改善に取り組まない限り、解決は困難です。

業界全体で荷待ち時間短縮に向けた協力体制を築くことが、2024年問題への対応力強化につながります。

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