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まなびのコラム

貨物運送の倒産急増の背景とは?深刻な人手不足や燃料高の影響

昨今、貨物運送業界では倒産が急増しており、その背景には多くの要因が絡み合っています。新しい労働時間規制の導入(2024年問題)が近づく中で、業界の運営方式に大きな変化が求められています。

特に燃料費の高騰などの物価高やドライバー不足の状況は深刻であり、これらの課題にどう向き合い、解決するかが要点になります。

本記事では、貨物運送業界の倒産状況やその要因、今後の予測、求められる対策についてみていきます。

貨物運送業者の倒産状況

東京商工リサーチの発表によると、2023年の貨物運送業者の倒産件数は328件に達し、前年比で32.2%増加しました。これは2014年の310件に続き、9年ぶりに300件を超える高い数値です。

倒産している企業の資本金別では、1千万円未満が238件で全体の約72.5%を占めました。その中で最も多かったのは「1百万円以上5百万円未満」の企業で96件、次いで「5百万円以上1千万円未満」が86件です。

負債額別では、1億円未満の倒産が189件で、全体の約57.6%、その中で「1千万円以上5千万円未満」が130件、そして「5千万円以上1億円未満」が59件でした。

従業員数別では、10人未満の企業が212件で、全体の64.6%、その中で「5人未満」が148件、そして「5人以上10人未満」が64件となっています。

これらの統計は、道路貨物運送業界において、特に中小・零細企業が経済的に大きな圧力を受けており、業界全体の構造的な課題に直面していることを示しています。

参考:2023年の運送業の倒産 過去10年で最多の328件 「2024年問題」を前に、「燃料高」と「人手不足」が直撃

倒産急増の背景

では倒産が急増している背景にはどのような理由があるのでしょうか。

先ほど紹介した東京商工リサーチの調査から主に「燃料費の高騰などの物価高」と「ドライバー不足」という要因が見えてきます。

燃料費の高騰などの物価高

2023年「物価高」に関連する倒産は121件に達し、前年比で75.3%増加しました。これは前年の1.7倍に相当する増加で、業界における経済的圧力の増大を示しています。

2023年9月末には、軽油の価格は1リットルあたり160.1円に達しており、これは2008年以来の高水準です。2024年1月現在、軽油価格は150円台まで下がってはいるものの、価格の高止まりが続いている状況です。

燃料費の高騰への対応として、燃料サーチャージ制の導入が一部で進んでいますが、中小・零細企業では荷主との交渉の難航等を理由に、価格転嫁が進んでいない状況が見られます。

運送業者にとって燃料費は運営コストの重要な部分を占めるため、価格の高騰は収益性に直接影響を及ぼし、多くの業者を経営困難な状況に追い込んでいます。

深刻なドライバー不足

「人手不足」に関連する倒産は41件に達し、前年比で127.7%の増加を記録しました。これは前年の2.2倍に相当する数です。

その中で「求人難」による倒産が16件(前年の5件から大幅増加)、人件費の高騰による倒産が14件(前年の1件から急増)と、それぞれ著しく増加しています。

業界における人手不足の問題が深刻化していることを示しており、特に燃料費の高騰が経営に打撃を与える中、人手を確保するための人件費上昇も経営に大きな負担となっていることが明らかです。

人手不足の主な原因としては、少子高齢化による労働力人口の減少、トラックドライバーの職業特性上の長時間労働、そして年収の低さなどが挙げられます。これらの要因により、新たなドライバーの確保が困難となり、既存のドライバーへの過度な負担が増大しているのです。

今後の予測と対策

貨物運送業界は燃料費の高騰などの物価高や人手不足といった現状の課題に加えて、2024年問題の影響も間近に迫っています。

これらの課題は、特に経営が既に疲弊している企業にとって深刻なものであり、特に中小・零細企業では業績の回復が遅れ、資金繰りに大きな圧力がかかっています。

そのため今後さらなる状況の悪化が予測されており、企業においては既存の仕組みから脱却する経営体制の見直しが求められます。

貨物運送業者に求められる対策
・エコドライブの実施
・低燃費車両の導入
・業務の効率化
・燃料サーチャージ制導入
・ドライバーの労働条件の改善

エコドライブの実施や低燃費車両の導入によって、燃料効率を改善し、運送コストの削減をすることが重要です。これにより、燃料費の高騰による経済的な圧力を緩和できます。

また、業務の効率化は、時間とコストの節約をもたらし、競争力を高めるために必要です。これには、ルートの最適化、貨物の積み合わせの改善、デジタル技術を活用した運送管理システムの導入などが含まれます。

さらに、燃料サーチャージ制の導入は、燃料価格の変動に柔軟に対応し、経済的なリスクを分散させる有効な手段です。荷主との力関係などもあり、導入は決して簡単なことではありませんが、検討するべき要素です。

最後に、ドライバーの労働条件の改善も、長期的なビジネスの持続可能性を高める上で重要です。これには、適切な賃金の提供、労働時間の管理、健康と安全への配慮、キャリアアップの機会の提供などが含まれます。

ドライバーの満足度と健康を保つことは、人材の確保と定着、そして最終的には事業の成功に直結します。これらの対策を総合的に実施することで、貨物運送業者は今後の挑戦に対応し、持続可能な運営を目指すことができます。

厳しい状況を乗り越えるために

物流業界に大きな影響を与える2024年問題を前に、貨物運送業者の倒産が急増している背景には、物価高やドライバー不足といった問題があります。

今後も厳しい状況が続くことやさらなる悪化が予測され、貨物運送業者においては様々な面において変革が求められます。また業界内での枠組みを超えた連携体制の構築も重要な要素になるでしょう。

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