クルマ社会の現在、新車、事故車、建設重機などを運搬する車両のニーズが高まっています。セルフローダーは、こうしたニーズに応える特殊車両で、車体前部を持ち上げて車体を傾けて、車両を搭載します。セルフローダーには独特な特徴があり、運転する時にも注意が必要です。また、似た車種のセーフティーローダーとの違い、セルフローダーの選び方、中古のセルフローダーを購入する時の注意点、おすすめの中古トラックについても解説します。
セルフローダーとは?
セルフローダーとは、建設重機や車両を運搬するトラックのことです。車両を傾けるジャッキを装備する特装車両で、主に中型免許や大型免許で運転できます。
ジャッキで車体を傾斜
セルフローダーは、運転席後部の大きなジャッキで車体を傾けて、運搬する重機や車両を積み込む仕組みになっています。ジャッキはクレーン付きのトラックが装備するようなハイジャッキタイプで、クレーン付きトラックのハイジャッキに比べると、はるかに高くまで車両の運転席部を持ち上げることが可能です。
歩み板のスロープで車両を積載
車両の運転席部が持ち上がると、反対に後輪を支点にして後部は下がるので、スロープのようになだらかになります。ただ、運転席部を最大まで高くしても車両の荷台部分は地上に届かないので、歩み板などと呼ばれる板をスロープ下部に置く必要があります。
自動的に下がる自動歩み板を装備した車両もあり、リモコンなどで作動させることができます。この歩み板により、重機や車両を荷台に積み込むことができます。積み込んだ後、歩み板は立てて収納します。その後、車体の傾斜を元に戻して車両などを運搬します。
建設重機、新車、事故車などを運搬
セルフローダーを使って運搬できる車両はいろいろとあります。よく運ばれるのは建設重機で、公道を走行できないホイールローダー、ブルドーザー、フォークリフトなどです。
また、ピカピカの新車が車両で運ばれている光景をよく見かけますが、新車もセルフローダーで運搬できます。
その他、車検が切れた車両、事故車、レース用の車などはもちろん公道を走ることができませんので、必然的にセルフローダーで運ぶことになります。
小型、中型、大型などがラインアップ
さまざまな種類の大小の車両を運搬するために、セルフローダーには、最大積載量によって、2トン前後(小型)、4トン前後(中型)、10トン前後(大型)などのタイプが用意されます。ウインチを搭載したものもあります。
登録は車載専用車
登録は車載専用車となります。リアのオーバーハングは車両のホイールベースの3分の2までで、荷台に穴が開いていることなど車両以外の運搬物を簡単には積めないような構造が必要です。
セーフティーローダーとは?セルフローダーとの違い
セーフティーローダーは、荷台がスライドして傾斜したり、荷台自体を下げたりして、車両を積み込むトラックです。セルフローダーに比べると傾く角度が浅く、より安全(セーフティー)に車両を積み込むことができるので、セーフティーローダーと呼ばれるようです。
セルフローダーとの違い
セルフローダーは、運転席後部の大きなジャッキで車体後部を傾けて、車両を積載しますが、セーフティーローダーは、トラックの荷台自身が油圧でスライドして傾き、地面に向かっていく構造になっています。そのスロープを利用して車両を移動させ積載します。
スロープの角度が浅いので、特に大きな車両を積み込むときなどは、セルフローダーより安全と言えます。
荷台、ウインチなどさまざまなタイプ
セーフティーローダーには、いくつかの種類があり、レッカー的に荷台そのものが下がって地面に降りて平行になり車両を積載できるアンダーリフト機能を備えたタイプ、大型のエアサスペンションを備えたタイプ、ウインチ、クレーンを装備したタイプなどがあります。
後方にスペースが必要
荷台を後方にスライドさせて掲載するタイプの場合は、荷台が後方に伸びますので、積載の時に後方にスペースが必要になってきます。スペースが少ない事業所などの場合は、寸法に注意して車両を選んだほうが良いでしょう。
セルフローダーを運転するときの注意点や必要な資格や免許
セルフローダーは、見ての通り非常に大きな車両のために、取り回しが難しく、ハイジャッキ、歩み板、ウインチなどの操作も必要ですので、運転にも慎重さが求められます。必要な免許や資格もあります。
セルフローダーを運転するときに必要な免許や資格
セルフローダーは、持っている免許の種類によって、運転可能な車両の重量と最大積載量が異なってきます。
免許の種類 | 車両重量 | 最大積載量 |
普通免許 | 5t未満 | 3t未満 |
中型(8t)限定免許 (H19.6.2以前取得の普通免許) |
8t未満 | 5t未満 |
中型免許 | 5t-11t | 3t-6.5t |
大型免許 | 11t以上 | 6.5t以上 |
さらに、走行が不能になった事故車などを巻上げ機(ウインチ)のワイヤーで引き上げる場合は、巻上げ機(ウインチ)運転者の資格が必要になってきます。
この資格は、2日間の学科と実技の巻上げ機(ウインチ)運転特別教育を受講すれば取得できます。テキスト代を含めて約15,000円かかります。
セルフローダーを運転するときの注意点
運搬する車両の長さ、スロープにかける歩み板の長さ、それにセルフローダーの取り回しも含めて余裕を持たせた長さのスペースを確保しなければなりません。
そのスペースにセルフローダーを運転して確実に駐車し、ハイジャッキを上げて作業を開始しましょう。
車両、重機のはみだしに注意
積み込む建設重機の重さ、大きさによってはさらに大きなスペースが必要となってきます。
また、セルフローダーに車両や建設重機を積み込んだ後は、セルフローダーの荷台から運搬する車両、重機がはみ出しているかどうかをよく見る必要があります。
セルフローダーの荷台の長さに対して10%以上はみ出す場合は、制限外積載許可が必要です。出発するところの管轄の警察に必ず申請してください。これを怠ると交通違反になる可能性が出てきます。
カーブ、駐車などの運転に注意
セルフローダーは長さのある車両ですので、カーブを曲がるときは特に注意が必要です。もちろん、基本はトラックですので、トラックの大型、中型を運転するときと同じですが、荷台が特に長いので長さを正確に把握しておきましょう。
狭いカーブ、急なカーブを曲がるときには切り返しも大切な操作です。
バックで事業所に入るときも同様です。
車両の高さを正確に把握
普通のトラックに比べて高さがある場合が多いので、高架道路の下、歩道橋の下、トンネルなどを通過するときは注意しましょう。
高さの数値を正確に把握しておく必要があります。
セルフローダーのベースとなる中古のトラックを
購入時のチェックポイント
セルフローダーは、新車の場合、大変高価で納期もかかりますので、中古トラックの購入を検討したほうが良いと言えます。それでは、中古のセルフローダー車を甲に有する場合のチェックポイントを説明していきます。
車両の年式
セルフローダーは、特殊車両と言っても、ベースは一般的なトラックです。中古トラックの選び方も一般な中古トラックと同様なところを注意します。
まずは乗用車などと同じく年式のチェックです。年式はもちろん新しいほどいいですが、その分、車両価格も高くなります。
新しい年式の排ガス規制対応車両ですと、エコカー減税の対象となり、ランニングコストがだいぶん抑えられることもあります。
走行距離
中古トラックも一般の乗用車などと同じく走行距離も重要です。年式の割に走行距離が多い場合は車両が酷使されているかもしれません。中古のトラック販売店で聞くことができれば、主にどんなものを運搬する用途で使われていたか確認しましょう。
中古トラックは、乗用車に比べると走行距離がかなり多くても大丈夫ですが、少ないのに越したことはありません。
最大積載量
主に何を運搬するかにより、最大積載量を考えなければなりません。大型の建設機械などを運ぶ場合は、かなりの積載量が必要になります。
セルフローダーは元の荷台、ジャッキなどの装備が重いため、普通のトラックに比べて、車両総重量に対する最大積載量が小さめになっています。
大型、中型などのチェックだけでなく、検討する中古トラックの最大積載量を必ず聞いておきましょう。
ジャッキ、自動歩み板、ウインチなどを動作確認
セルフローダーは、運転席部を持ち上げる心臓部のハイジャッキの状態が一番大切です。重量のある車両前部を持ち上げますので、実施に伸縮部を作動させて、錆の状況や、ガタツキがなくスムーズに動くかなどをチェックしましょう。
また、自動歩み板、ウインチなどを装備する車両の場合は、それらも作動させて確認する必要があります。
メーカー、デザインなどに注目
一般トラックと同じく、セルフローダーでも中古のトラック市場で人気のあるメーカーやモデルを調べる必要が出てきます。さまざまなデザインのものも用意されています。
日野自動車、いすゞ自動車、三菱ふそうなどから、いくつかの車両が発売されていますので、中古トラックの販売店で実車を見て選ぶと良いでしょう。
おすすめの中古セルフローダー車3選
各メーカーの中古トラックの市場で人気のある車種を紹介します。
いすゞ エルフ
エルフは、いすゞ自動車のトラックとして60年以上の長きにわたり、生産されています。派生型トラックのベースとなる車両で、小型クラスから中型クラスまでさまざまなモデルが用意されています。
ラジコンウインチ、省スペースモード・低スロープモード切替などの機能を備えたタイプがあるのも魅力です。
日野自動車 プロフィア
プロフィアは日野自動車が展開する大型トラックです。1992年に登場、特に大型で居住性も高いです。大型トラックとして、さまざまな派生シリーズがあります。
元が大型車両なので、セルフローダーとして最大積載量が10t以上のタイプも用意されていますので、多くの車両を運ぶのに適しています。
まとめ
このようにセルフローダーは、多くのメーカーから製造販売されており、それらの中から目的に合った車種を選ぶことができます。
運搬するのは建設重機か事故車か新車か、一度に何台ぐらい運ぶか、などによって、装備品、最大積載量を決めなければなりません。
おおよその車種が決まったら、中古トラックの販売店を回って、年式、最大積載量を考えながら目的に合う車両を探しましょう。それほど多く中古トラックの市場に出回る車種ではありませんので、気に入った車両があれば早めに予約した方がいいでしょう。
もちろん、最重要部のジャッキのチェックを怠らず、歩み板、ウインチなどの装備品があれば、これらの状態もよく確認してからセルフローダーのベースとなる中古トラックを購入する必要があります。