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トラックのリターダーとは何?仕組みや使い方などを解説

まなびのコラム

トラックのリターダーとは何?仕組みや使い方などを解説

私たちの暮らしや産業を支えるトラックやバスの安全な運行を陰で支えているのが、数々の装備や技術です。

今回は、その一つである「リターダー」に焦点を当て、仕組みやメリット、他の補助ブレーキとの違い、使い方、効かない場合に考えられる原因などを説明します。

大型車両の運行に関わる方や、リターダーについて知りたい方、ご興味のある方はぜひチェックしてください。

トラックのリターダーとは?

大型トラックやバスには、車体の重量や積載物の負荷に耐えながら安全に停止・減速するために、高性能なブレーキシステムが搭載されています。一般的なトラックのブレーキは、フットブレーキと呼ばれるもので、ブレーキペダルを踏むことでエア圧を使ってホイールのブレーキシューを押し当て、摩擦によって減速・停止させます。また、フットブレーキを補助する役割の補助ブレーキも備わっています。

リターダーとは、大型トラックやバスなどに搭載される補助ブレーキの一種です。通常のフットブレーキとは異なり、リターダーは摩擦を用いずに制動力を発生させるため、ブレーキパッドの摩耗を抑えつつ減速が可能です。

特に長い下り坂を走行する際や、高速道路での減速時に効果的で、大型車両の安全運転を支える重要な存在です。近年は排気ブレーキの効きにくいLPG車やCNG車にリターダーが活用されています。

かつてはコストや重量の課題から日本での導入率は欧州に比べて低い状況でしたが、現在は、排出ガス規制による小排気量化の進展により排気ブレーキの効果が得にくくなり、リターダーの需要が高まっています。

種類・仕組み

リターダーは、主に「流体式」「電磁式」「永久磁石式」の3種類があり、それぞれ異なる原理で制動力を発生させます。

流体式リターダーは、プロペラシャフトに連動するローターとシャーシに固定されたステーターの間にオイル(エンジンオイルやATFなど)を送り込み、撹拌によって発生する流体抵抗を制動力に変えます。冷却は水冷式が多く、発熱に強い反面、重量があり後付けが難しいのが難点です。世界的に最も普及している方式です。

電磁式リターダーは、固定子に電流を流して磁場を発生させ、その中を導体(回転子)が回転することで渦電流が生じ、電気的な抵抗として減速力を得る仕組みです。空冷式で後付けもしやすい一方、発熱処理や電力供給体制の強化が必要です。

永久磁石式リターダーは、固定子にネオジム系の永久磁石を使用し、回転によって発生する磁気抵抗を制動力に変換します。構造がシンプルで小型・軽量、コストパフォーマンスにも優れています。

メリット

最大のメリットは、通常のフットブレーキの負担を軽減できる点にあります。特に長い下り坂や連続した減速操作が必要な場面では、ブレーキの過熱によるフェード現象(制動力の低下)や、ブレーキ液が沸騰して効きが悪くなるヴェイパーロック現象の防止に効果的です。

それによりブレーキパッドやライニングの寿命を延ばし、メンテナンスコストの削減にもつながります。さらに、牽引車と被牽引車が折れ曲がるジャックナイフ現象のリスクを抑制することもでき、安全性の向上に寄与します。

リターダーの使用によりフットブレーキの使用回数が減ることで、運転中の疲労軽減にもつながります。さらに、高速道路など一定速度を維持しながら減速が必要な場面での、速度維持にも役立ちます。

その他の補助ブレーキとの違い

排気ブレーキやジェイクブレーキ(圧縮開放ブレーキ)とリターダーは、いずれも補助ブレーキですが、それぞれ仕組みが異なります。

排気ブレーキは、排気管に設けられたバルブで排気ガスの流れを一時的に遮断し、エンジンの回転抵抗を利用して減速力を得る仕組みです。構造がシンプルで軽量ですが、制動力はエンジン回転数や排気量に依存し、長い下り坂などでは十分な効果が得られない場合もあります。

ジェイクブレーキ(圧縮開放ブレーキ)は、エンジンの圧縮行程で発生するエネルギーを意図的に逃がすことで制動力を得る方式です。
※三菱ふそうではパワータード、日野自動車やいすゞではエンジンリターダー、UDトラックスではエキストラエンジンブレーキという名称

リターダーは、流体や電磁力などによって駆動系に直接制動力を与えるため、より強力な減速が可能です。

リターダーの使い方・操作方法

リターダーの使い方・操作方法

リターダーの使い方・操作方法はシンプルで、通常はステアリング横のレバーやスイッチで制御します。タイプによっては段階的な調整ができ、「1~5段階」といったモードで切り替えることができます。走行中にドライバーが任意で操作し、特に下り坂での速度維持や高速走行からの減速時に用いられます。

操作のタイミングとしては、フットブレーキに頼る前にリターダーを活用するのが理想的です。アクセルを緩め、リターダーのスイッチを入れることで、車両はエンジンや駆動系の回転抵抗によって徐々に減速します。

なお、リターダーは基本的に単独では作動せず、排気ブレーキと連動して作動します。また、アクセルやクラッチペダルを踏んでいる状態でも作動しないため、注意が必要です。
さらに、路面状況や積載量に応じた慎重な運転が求められます。

また、リターダーは補助ブレーキとして有効ですが、過信は禁物です。フットブレーキと適切に併用することで、安定した減速・停止が可能になり、より高い安全性を確保することができます。状況に応じた使い分けが事故防止や車両の負担軽減につながります。

リターダーが効かない場合に考えられる原因

リターダーが効かない場合に考えられる原因

リターダーが効かない、あるいは制動力が著しく低下している場合、原因として多いのが「電気系統のトラブル」です。配線の断線やスイッチ類の接触不良、ヒューズ切れなどにより制御信号が伝わらず、リターダーが作動しないことがあります。

異常が確認された場合には速やかに専門業者に点検を依頼しましょう。日常点検での早期発見と、定期的なメンテナンスがトラブル回避につながります。

リターダーは安全運転を支える重要な装置であるため、少しでも異常を感じたら放置せず対応することが大切です。

トラックのリターダーについて

トラックのリターダーは、安全運転とブレーキ保護の面で大きな役割を果たします。構造や使い方を正しく理解し、適切に活用することで、長距離走行時の安全性や運転効率の向上が期待できます。

なお、トラックの買い替えをご検討中であれば「トラックランド」にご相談ください。高品質な中古トラックを適正価格でご提供しており、ご希望の車両をお探しするサービスも行っております。

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この記事を監修した人

この記事を監修した人 トラックランド管理人:高良

神奈川県出身。株式会社タカネットサービスの9年目の社員。
これまでに監修した記事は200件以上!中古トラックに関する豊富な知識と経験を活かし、中古トラック業界の最新情報やお役立ち情報を発信しています。

実際のトラック販売やメンテナンスにも精通しており、読者にとって有益な情報をわかりやすく提供することを心がけています。

趣味は野球観戦で、休日には球場でリフレッシュするのが楽しみの一つ。

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