近年、多くの企業が物流コストの上昇に直面しており、その影響は運送業界だけでなく、製造業や小売業など幅広い分野に及んでいます。物流は企業の供給網を支える重要な要素であり、コストの増加は利益率や事業運営に大きな影響を与えるため、適切な対応が求められます。
今回は、物流コストの高騰がなぜ起こっているのか、その背景を解説し、企業が取るべき対策について考えていきます。
物流コストとは?
商品や原材料を供給元から消費者や企業へ届けるために発生する費用の総称です。それには、輸送費、保管費、人件費、梱包費、荷役費、在庫管理費などが含まれ、物流の各工程で発生する様々なコストが含まれます。
物流コストは、商品の価格や利益率に直接影響を与える重要な要素であり、コストの増加は経営全体に大きな負担をもたらします。
物流コスト高騰の原因
物流コストが高騰している背景には、複数の要因が絡み合い、業界全体に影響を及ぼしています。特に、燃料価格の上昇や人手不足は、物流コスト増加の大きな要因となっており、企業の経営や供給網にも影響を与えています。
燃料価格の上昇
物流業界において、燃料費はコストの大部分を占める重要な要素です。近年、原油価格の変動や国際情勢の影響、為替相場の変動などにより、ガソリンや軽油の価格が上昇し続けています。それにより、輸送コストの増加が避けられず、物流業者の経営圧迫や運賃の値上げといった影響が広がっています。
特に、日本の物流はトラック輸送が主流であり、燃料費の高騰は中小企業を中心に大きな負担をもたらしています。燃料費の上昇は、最終的に消費者への価格転嫁につながるため、大きな問題です。
人手不足
物流業界では、ドライバーや倉庫作業員の人手不足が深刻化しており、労働力の確保が難しくなっています。特に、日本では少子高齢化の影響を受け、若手のトラックドライバーの確保が難しく、業界全体の平均年齢が上昇しています。
また、2024年問題(トラックドライバーの時間外労働規制の強化)により、長時間労働が制限されたことで、企業は新たな人材を確保する必要があり、人件費の上昇や雇用コストの増加が物流コスト高騰の大きな要因になっています。
このように、燃料価格の上昇と人手不足は、物流業界全体に大きな影響を与え、企業の負担を増加させる要因になっています。今後、それらの課題にどのように対応していくかが、物流業界の大きな課題となっているのです。
企業における主な対策
物流コストの高騰に対応するため、多くの企業が燃料費の削減や人手不足の解消、業務の効率化に向けた取り組みを進めています。ここでは、特に有効とされるエコドライブの推進、低燃費車両の導入、業務の効率化について解説します。
エコドライブの推進
燃料費を削減するには、運転方法の見直しによる燃費改善が重要です。エコドライブとは、急発進・急加速を避け、一定速度を維持しながら走行することを指し、燃費を向上させることができます。ドライバーが適切な運転を心がけることで、10%以上の燃費向上が可能とも言われています。
また、アイドリングストップの徹底やエアコンの使用を最適化することで、無駄な燃料消費を抑えることができます。企業によっては、エコドライブ講習の実施やドライバーごとの燃費データの管理を行い、社内での意識向上を図るケースも増えています。
低燃費車両の導入
車両そのものの燃費性能を向上させることも、物流コスト削減の大きなポイントです。近年では、ハイブリッド車やEV(電気トラック)、燃料電池トラック(FCV)など、環境負荷が少なく、燃費性能に優れた車両が登場しています。
特に長距離輸送を行う企業では、ディーゼルエンジンの高燃費車両を選定し、燃料コストの削減を図るケースが多く見られます。また、定期的なメンテナンスを実施し、エンジンやタイヤの状態を最適に保つことで、燃費を維持することも重要です。
最新のテレマティクス技術を活用し、車両ごとの燃費や走行データを分析することで、より効果的な運行管理が可能になります。
業務の効率化
物流コストの削減には、業務の効率化も有効です。最短ルートを算出することで、走行距離の短縮や燃料消費の抑制が可能になり、輸送コストの削減につながります。また、物流拠点の再編成も重要な施策の一つです。
需要に応じた倉庫の配置や配送センターの最適化を行うことで、無駄な輸送を減らし、より効率的な物流ネットワークを構築できます。加えて、荷待ちや荷役時間の削減も欠かせません。積み降ろし作業の効率化や予約システムの導入により、ドライバーの待機時間を短縮し、労働負担の軽減と運行効率の向上を実現できます。
物流コストの高騰について
物流コストの高騰は、燃料価格の上昇や人手不足などの要因が複雑に絡み合い、企業の経営に大きな影響を与えています。特に、2024年問題による労働環境の変化は、物流業界全体の構造を見直す必要性を生んでいます。
こうした課題に対応するためには、エコドライブの推進や低燃費車両の導入、業務の効率化が不可欠です。企業がこれらの対策を積極的に進めることで、コストの削減だけでなく、環境負荷の軽減や持続可能な物流の実現にもつながるでしょう。
この記事を監修した人

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