タカネットサービス・代表取締役社⻑ ⻄⼝ ⾼⽣の記事です。
-タカネットサービスを創業した経緯は?
西口高生社長(以下、西口):私は元々、物流関係の業界紙の取締役を務めておりました。新聞社はいろんなところに取材行うので、物流業界のナレッジが蓄積されます。そこでシンクタンクを設立し、コンサルタント業務を行っていました。それが縁となり、中古車販売の大手企業に誘われ、参画することになりました。そこで私が統括することになったのは、乗用車ではなく、中古トラック・商用車の買取販売事業でした。
-そこから、中古トラックの売買に直接、従事するきっかけだったんですね。
西口:長年、物流業界の流れを見て、中古トラック市場には大きな可能性があると感じていました。実際に、私がプロジェクトを手がけてから、業績は右肩上がりに成長を遂げました。日本の中古トラックは海外で非常に人気があるため、海外のマーケットでも順調にビジネスを拡大していたのですが、2008年のリーマンショックの煽りを受けて、海外事業をストップすることになり、最終的にその会社は中古トラック・商用車全体の事業からも撤退、乗用車に専念することになったんです。
当時、役員を務めておりましたがそれまでに付き合いのあったお客様も多く抱えており、その方々を放り出すわけにはいきません。議論を重ね結果的に独立し創業したのが「タカネットサービス」です。
-2009年6月に創業された当時の様子を教えてください。
西口:最初は2人で創業しました。前職では、中古トラックの輸出に便利な横浜に拠点を構えていたので、引き続き本社は横浜に置き、「ユーズド(中古商材)」にフォーカスしたユーズドソリューションカンパニーとしてスタートし、その後中古車両を核に総合的なリユース事業を展開するに至ります。実は、前職の在籍中に、トラックを短期リースし、その後、販売する現在の「リース de スグのり」に繋がるアイデアは生まれていたのですが、さまざまな事情から前職では実施には至りませんでした。車両のレンタル・リースを収益化するまでには時間を要します。アイデアはあっても、事業が安定するまで実施できなかったのですが、大きく潮目が変わったのは、2011年の東日本大震災でした。
-2011年の東日本大震災は、創業からわずか2年後の出来事でしたね。
西口:2011年は我々の流れを変えた1年になりました。当時、親しくさせていただいたお客様が、宮城県石巻市で整備工場を営んでおられたんです。地震発生後、しばらくその方と連絡がつかず、いてもたってもいられず18時間ほど車を乗り継いで現地に駆けつけました。残念なことに会社は水没していましたが、整備工場の扉に「避難所にいる」と書き残されていたので、避難所で無事に再会することができました。それが被災直後のことだったのですが、しばらくしてから、地元の運送会社から「がれきを撤去することになったが、ダンプカーがないので貸して欲しい」との依頼がありました。石巻から気仙沼の沿岸は水産の町です。多くの運送業者が所有していたのは、水産物を運ぶ車でした。当時の政府は、地元への経済支援の意味も込めて、復興事業を大手ゼネコンではなく、地元の運送業に優先して入札参加資格を与えていたんです。我々が所有する車両が復興に役立つならばと、石巻に看板をひとつ建てて、復興ためのトラック事業をスタートしました。
-「リース de スグのり」の
アイデアが実現化したのは被災地だったんですね。
西口:そうです。復興したらダンプカーは使いません。必要なのは販売ではなくリースだったんです。そこで中古ダンプカーをかき集めて、リースを始めました。が、道路は寸断され、路面もガタガタ。すぐにダンプカーは故障してしまい、結局、リース元であるこちらが多額の修理費を負担することになりました。ですから、利益はほとんどありませんでした。そうこうしていると、-トラックメーカーから、新車を購入してほしいという話が舞い込みました。新車は1年保証が付いているので、故障しても保証が効きます。しかも、新車ですから故障も少なく、使用者も快適です。そこで、新車を次々と投入することになりました。保証期間の1年はリースし、その後、中古トラックとして販売するという、現在の「リース de スグのり」の原型となる事業内容となり、徐々に収益を得られるようになりました。これが、現在の投資事業を含めた、我々の事業の起源になります。
-そこから事業は順調に拡大していったのでしょうか。
西口:そうは言っても、このレンタルリース事業は、相当な痛みを伴いながら、その結果生まれたヒット商品です。その後も、外的な要因から幾度となく浮き沈みを経験しましたが、概ね順調に推移していると言えると思います。一昨年、思い切って上場を廃止し、兼ねてから温めていた投資商材の開発に着手しました。車のレンタルリースの仕組み自体を投資家に購入いただき、減価償却の繰延商品として損金を算入してもらい、我々は、アセットの管理会社として運用としていくという「投資 de スグのり」という商品です。その後、投資事業も順調に推移し、昨年は、過去最高益を更新しました。話は長くなりましたが、このように、我々の投資事業は突然始まったのではなく、ベースは2011年にまで遡ります。それを投資商品として組み直し、現在に至るというわけです。
-競合会社も登場する中で、タカネットサービスの強みとは?
西口:ひとつは、中古車の査定能力があるという点です。弊社のスタートは、中古車の買取販売でした。2019年には栃木県大田原市に東日本最大級の車両販売センター兼整備センターを建設したのですが、ここで購入した中古トラックをリノベーションし、付加価値をつけて販売するという元々の正業を維持しながら、買取販売、リース・レンタルおよび投資という3本柱で事業を進めています。他社も中古車の買取販売を行っていますが、それだけでしたら、比較的コストを低く抑えられます。弊社のように、購入して車両をリノベーションし、リース・レンタル、販売するというのは、人件費を始めさまざまなコストが発生します。レンタル・リースを始めた当初、ある意味、我々のような考え方は、この業界ではアウトローな存在でした。
弊社は現在、車両リノベーションの他、車両を運搬する「陸送ネット」から栃木県に本社を置く物流会社「タカロジ」まで、トラックにまつわる全てのことを扱っています。中古車の買取、販売から新車の提供まで、整備、陸送、ロジティクスも含めグループ内でワンストップサービスが展開できるネットワークを構築していることは大きな強みであり、これだけの規模で他社が類似の事業を展開することは難しいのではないでしょうか。
-昨年、中古車価格が高騰しましたが、現在、落ち着きを見せつつあります。これはどのような影響がありますか。
西口:中古車の価格が高騰し、現在価格が落ち着きつつあるなかで、我々の事業に影響があるのは、正業である中古車売買です。これに対しては、全体を俯瞰することが大事だと思っています。部品・半導体不足などで高騰した価格が、現在、正常に戻ろうとしている段階ですが、これからさらに下落するリスクも考慮しなくてはいけません。将来、国内の乗用車は少子化による免許保有率の低下によって、販売数が下降することが考えられます。電気自動車との入れ替えで一時的に購入台数が増加することはあるかもしれませんが、長期スパンで考えると、国内の乗用車登録台数は、人口に比例して減少するでしょう。
一方で、トラックの台数は輸送量に比例します。コロナ禍を経て、EC通販が右肩上がりで伸びています。傾向としては、多頻度小ロットの物流が増加しており、今後も伸びていくだろうと予想されています。ECサイトで注文を受けてから配送するという、発送側が需要予測ができない商品を即時配達するというのが今後の物流の要になっていくわけです。物流が増えると当然トラックの需要も増えます。
また、もうひとつの懸念点としては2024年問題がありますが、これに対する弊社の考え方は次回、詳しくお話しましょう。