新しい多様性の時代に合わせて今までの“いいもの”はもちろん
これからの“いいもの”を常に考えていたい
栃木県北部、山間部を抜けると広大な採石場が広がり石材を運ぶ重機が絶え間なく動いている。
創業64年目を迎える東京石材株式会社は、道路工事用の砂利・採石事業に加え多様な分野へ事業を展開させ続けている。
「企業を継承していくうえで精神は変えてはいけないが、状態は常に変えていかなければならない。」
柔和な笑顔でそう語る代表取締役の保永順平氏に、三代目社長として100年企業に向ける思いを伺った。
【東京石材株式会社】
設 立:1960年(昭和35年)4月
本 社:栃木県大田原市亀久957-1
事業内容:岩石採取業、産業廃棄物中間処理業、再生瓦(瓦チップ)生産販売・施工、フットサル事業 他
子会社:東石DX株式会社
従業員数:14名(子会社含む)
保有車両:約10台(主に重機車両)
― 社長ご就任までの経緯を教えてください
東京石材は妻方の祖父の代から続く会社でして、先代社長(現:会長)は私の義父にあたります。今から11年前に会長から「うちに来ないか?」とお声がけいただいたことが入社のきっかけでした。それまではずっと千葉のほうで営業関係の仕事をしていたので、採石事業は全くの畑違いで何も知らない業界でした。入社当初は重機のオペレーターをしていましたが、免許なども1から全部取りました。社長になるまでの7年間はずっと外仕事でしたね。
当社は今年で創業64年目になり僕は三代目社長になるのですが、本業の採石事業は先々代からずっと続いている事業なので就任以前からいる従業員が事業を回してくれるんです。それなら僕は、その分ほかの分野を広げることをしようと思い、現在は採石事業に加え新事業の拡張や自社商品の製造・販売を進めています。
― 保永社長が発足された事業について教えてください
ICT事業部※1は僕が社長就任時に発足した事業になります。きっかけは、近所の人に会社のパソコンを診てもらったことでした。以前からIT関係に詳しい方とは聞いていたのですが、思っていた以上にその方が詳しくて、「うちの会社来ない?」ってすぐに声をかけました(笑)今の時代どんどんIT化する企業が増えていますが、まだまだ使いこなせる人は少ないですから。なのでこういったICTサポートができるサービスは需要があると見込み、当初はその方1人でICT事業部を発足しました。
発足してからたくさんの依頼を受けていくうちにだんだんと大きな仕事をいただけるようになりました。加えてパソコン教室の講師もやるようになりましたが、授業を受けに来た生徒さん達のほとんどが「東京石材」という企業名に困惑していました(笑)。パソコン教室とは真逆の業種ですからね。それなら社名を変え子会社化して、人も増やして仕事を回そう、という流れで2年前に現在の「東石DX株式会社」になりました。自社のホームページもこの子会社で作ってもらっています。
※1:「Information and Communication Technology」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを意味する。
― 多分野に事業展開されているのですね。フットサル事業はどのような事業でしょうか?
フットサル場の貸し出し事業なんですが、うちではちょっと変わった運用をしており、会員・完全予約制の無人フットサル場なんです。普通のフットサル場って常駐のスタッフが必ず1〜2名いるんですが、都内と違ってこの辺だと常に来場者がいるわけではないので、あえて人を置かずに運営しています。今は電子決済もあるしフットサルをやる年齢層って若い方が多いので無人でも成り立つんですよ。
そもそもこのフットサル場は会長が空いた土地を活かそうと始めたものなのですが、運営などは管理人として外部の方に委託していました。ただその方がフットサルを引退されてから1年くらい使わないままになっていたんです。僕自身もフットサルをやっていたので「もったいないから使おうか」と、2年前に「シャリシャリピッチ那須」という名前で事業としての運用を始めました。現在はカフェなどが併設されたフットサル場「シャリシャリパーク」へリニューアルしています。
カフェが併設されたフットサル場。子どもがフットサルをしてる間、保護者の方がくつろげるようにとの思いからリニューアルされた。
―トラックランドをご利用されたきっかけは何ですか?
当社は石材の製造のみで、運搬は外部へ委託していたんです。ただ、委託先の会社も高齢化のあおりを受けドライバー不足の影響が出始めており、それなら自社での運搬に切り替えていこうとダンプ購入を決めました。当初は新車の購入を検討していましたが、問題になったのが納期でした。ドライバーの採用も決まっているのに新車では納車が間に合わない!と困っていたところ、近所にトラックランドの店舗があることを思い出したんです。近くを通りかかりチラっと展示場を見たら並んでいる車両が全部きれいで、「これなら新車に近い車があるかも?」と後日来店し、今回のダンプに決めた次第ですね。
―どのような自社商品を販売されているのですか?
石材や砂利、再生瓦チップや水槽の底石などを販売しています。ちょうど今年の3月に「石(きせき)」*2と「みやつこうすたぁ」*3という自社商品が大田原市ブランドに認定されたんですよ。有名どころの大田原牛や唐辛子と並んで、初めて飲食物以外が地元の名産品として登録されました。
「みやつこうすたぁ」は当社の採石場から採れる花崗岩で作っているんですが、大田原市の笠石神社で奉られている石碑*4とまるっきり同じ石質の花崗岩でして、いわば国宝と同じ石から作られているコースターになります。そういった歴史的価値がブランド認定への評価にも大きく関わっていますね。
「石」は大田原市内にある4つの団体との共同研究で作られた水槽用の底石です。これが完成までに1年半かかっているんです。商品化に至るまで何度も試験や改善を重ね、ようやく商品化できた石なんです。結構、頑張ったんですよ。実はもともとこの商品は「輝石(きせき)」という商品名になる予定でしたが、すでに鉱石の種類として輝石があることを知り、そこで亀久という地名にちなんで「」という創作漢字を用いた商品名になりました。
※2:水の浄化作用がある花崗岩を加熱滅菌した、魚にも優しい水槽の底石。大田原市産学官連携推進事業の共同開発商品。
※3:硬質で耐久性があり、吸水率が低いことによりすぐに乾くコースター。
※4:栃木県大田原市湯津上にある飛鳥時代の石碑。国宝に指定されている。書道史の上から、日本三古碑の1つとされる。
記事中に登場する商品たち。写真左:「瓦チップ」が敷き詰められた庭 中:みやつこうすたぁ 右:石
―会社のイメージキャラ「てぃ~ずくん」も亀久にちなんだキャラですか?
そうですね、イメージキャラを決めるにあたって「地元の方に寄り添いたい」という思いがありました。僕も先代社長も栃木県外出身者なので、長年その土地に住んでいる方々にとって誇りである亀久からあやかって亀にさせていただきました。「てぃ~ずくん」は子会社でデザインされたキャラなのですが、イラストの中に細かく意味があり東京石材の各事業を表しています。まず下に敷かれているのは再生瓦生産販売事業を表す「瓦チップ」、亀は亀久の「亀」、尻尾は子会社から取って「DX」、頭が光っているのは当社でやっている太陽光発電の「ソーラーパネル」を意味しています。甲羅はデザイン担当者の好物であるメロンパンですね(笑)
―企業ロゴデザインにはどのような意味が込められていますか?
企業ロゴは採石事業を表すデザインになっています。これも「てぃ~ずくん」と同デザイン担当者の発案でして、「Touseki」のToは石、kiは材と読めるようになっていて、真ん中のuseと合わせて「石材を使う」という意味を込めています。
―企業ロゴに添えられた「感謝と価値創造で100企業へ」という言葉について、100年企業へ向けての思いをお聞かせください。
企業を継承していくうえで精神は変えてはいけないですが、状態は常に変えていかなければならないと僕は考えています。
先の話にあった自社商品もその考えから生まれています。当社で扱う石材は基本的には道路工事の下地などに使われるのですが、やっぱり工業用だけだと付加価値もないし、例えば将来は車が空を飛んで道路も傷まなかったら 砂利は不要になるじゃないですか。そこで「何か石で作れないかな?」と。
今までは採石事業のみで経営が回る時代でしたが、将来もそうとは限らない。100年目には当社から採石事業もなくなっているかもしれません。とはいえいきなり全てを切り替えられるわけではないので、少しずつ多分野の事業へ枝分かれして、新たな核が見つかればそれに合わせて状態を変化させていこうかと。僕一人ではなく従業員みんなと変化の方針を話し合い、みんなが「これがいい」と思える100年後になれるよう、これからも進んでいきたいと思います。
【記事中に登場した店舗・商品等に関する詳しいお問い合わせ先】
https://touseki.ltd(東京石材企業サイト)
https://dx.touseki.ltd(東京DX企業サイト)
https://www.instagram.com/shaliscafe/(シャリズCafé公式Instagram)