両思いは明日への原動力になる!
生産者と消費者を繋げる「おいしいの架け橋に」
全国1位のみかん生産量を誇る和歌山県。
その中央部に位置する有田郡有田川町でみかん作りが始まってから450年。
みかん畑の7割が山の斜面にあるこの町は、取材に訪れた12月に出荷の最盛期を迎えていた。
みかんなどの果実や野菜、花といった農産物販売を手がける
株式会社みかんの会は『うまいを力に。』を掲げ、みかん農家を盛り立てようと日々奮闘する。
代表・宮井健太氏、デジタルマーケティングマネージャー・星田一樹氏にお話を伺った。
【株式会社みかんの会】
所 在 地:和歌山県有田郡有田川町糸川400
従業員数:従業員:27名(社員5名、準社員2名、パート20名)
所有台数:6台
レンタル車両:4tアルミウィング
(2021年11月12日〜2022年1月11日)
(2020年11月10日〜2021年1月9日)
(2019年11月11日〜2020年1月10日)
-みかんの会のこと
2018年(平成30年)7月、宮井健太氏社長就任の経緯を教えてください。
宮井社長(以下・宮井):会社設立は2003年です。当時の代表が私の父と付き合いが古く、高校を卒業したらよろしくという話になっていたんです。父も祖父もみかん農家だったので子供の頃からみかんは身近にありました。小学校ではどこのみかんが美味しいなんて言いながら通学してましたしね。高校時代は野球部で活動していたんですが、部活を引退した高校3年の冬から当時の株式会社サンライズみかんの会※1にアルバイトで入り、そのまま入社しました。
ポスターに掲げた『うまいを力に。』は私たちの理念なんです。美味しいものを食べるということは人の活力になる。美味しいものをまた食べたいという気持ちは明日への原動力になる。だから『うまいを力に。』なんです。そして、この言葉には美味しいものを作っている人の努力があってこそという気持ちも込めているので、それもしっかりと商品に乗せて伝えたいと考えています。消費者の「美味しい」という言葉が作り手の力になりますからね。一方通行ではなく双方へ繋がっている。それを届けるのがみかんの会の仕事だと思っています。
マネージャーの星田は中学1年からの付き合いです。他の社員も野球部の仲間で、星田だけがバレー部だったけど。みんな中学からだから20年来の仲間ですね。私が30歳の時に社長になり声をかけさせてもらいました。みかんは冬の収穫時期になると忙しくなり朝まで仕事することもあります。そうしないと受注がこなせないんです。星田は入社前から、忙しい時には電話1本で来てくれて一緒に作業し、そのまま仕事に行ったり。そんなこともありましたね。
星田氏(以下・星田):私はこちらに来る前は葬儀屋で働いていましたが、代表宮井とはいつも、みかんのマーケティングや有田川町の未来について話をしていました。特に入社してからは消費者の声をどのようにして生産者に伝えるかを考えてきましたが、ここで面白いのが生産者と宮井の距離が近いことなんです。宮井は思ったことをすぐに伝えるし、消費者の感想を糧に生産者はもっと美味しいものを作ろうというエネルギーになる。双方向のコミュニケーションが重要だということを実感しています。
※1:2019年5月、株式会社みかんの会へ社名変更 ※2:仏花・墓花・花瓶に生ける花のこと
蜂蜜や組花※2等の製造販売、みかんジュースなど新商品開発もしていますね。
新しいことにチャレンジをするのは社長就任前から?
宮井:現状を変えたいという思いは以前からありました。若い頃からみんなで遊んでいてもそういう話になってましたね。20歳頃だったか、みかんのオーナー制度を考えて、それだったら生産者の収入も安定するよねと話していたんです。ただ20歳そこそこだとアイデアがあっても形にはできなかった。ようやく実現できるようになってきたと思います。
星田が一緒に変えてきた人間なんです。考えていても変えられなかったことが、星田が来てようやく変えられるようになった。今までは漠然と、みかんを売って、卸して。当時から安定してずっと続けたいとは言ってたんですが、ようやく形になってきた実感がありますね。この土地で生産者とずっと付き合える基盤を作っていこうという意識が社員の中にも芽生えたし、はっきりとした目標もできた。何より会社らしくなったかな。
結局、農業の根本は農作物を作ること。作らないと農業ではない。それを考えた時に、自分は周りにいる取り巻きじゃないかって思ったんです。農業をやってもらって、その仲介をやっているだけなので、それがなくなったら僕らの仕事は終わり。このまま市場や相場に左右されながら卸をやっていても、こちらに価格の決定権がなければ続かない。だから自分たちでブランディングをしていく必要があると考えたんです。そこから蜂蜜や、みかんジュースの商品開発が進みました。また、みかんだけでは年間雇用が難しいので、通年販売できる組花を製造し季節に合わせた花の商品販売をしています。農家さんともこのくらいの価格だったらやっていけるよねと収入のプランを打ち出すことができるようになりました。大きく変わったと思うし、これも地域貢献の一つだと考えています。
蜂蜜の生産をしていて面白いなと思ったことがあります。みかんは5月に花が咲くんですが、みかんの花が多い年は、蜂蜜が採れる量が増え、それに比例してみかんの収穫も多くなるんです。自然からの恵みを実感します。
収穫したみかんをそのまま箱詰めし出荷する
「山直(やまちょく)」について聞かせてください。
宮井:スーパーで売っているみかんは酸味が少なかったり、みかん本来の味がしないという生産者の声があるんですよね。1年かけて育てたみかんが消費者に届く段階で“伝えたい味”ではなくなっていることがある。味が変わってしまうのは本意ではないなと思ったんです。そこで、生産者から消費者に直接みかんを届ける仕組みを作りました。畑で採れたままを箱詰めし、すぐに発送する。サイズもバラバラですが、みかんの鮮度を第一に考えました。有田の同業者とも話をするんですが行き着くところはそこかなと思うんです。“産地の思いもしっかりと届ける”こと。また、その発送作業を生産者さんがしようとすると、昼間はみかんの木の手入れや収穫などの仕事があるので作業は夜になってしまう。だから発送作業は僕らみかんの会がするよと、という思いです。
みかんの規格って人が決めていることで、どんなみかんも生産者が心を込めて作ったみかんなんですよね。山直は、規格による選別や輸送時間なども極力省くことで、みかんへのダメージも最小限にできるし、みかん本来の姿も届けたいと思っています。
-レンタル車両のこと
2019年から3年連続で車両のレンタルをいただきました。
その経緯は?
宮井:以前はもう少し国道に近いところに会社があったので、トラックを使う概念はなかったんですが、3年前に現住所へ移転したことでトラックが必要になりました。以前のところでは多い時には日に2,000ケースのみかんを発送していました。運送屋さんに10トン車をつけてもらい、その場で発送ができたんですが、ここは道が狭くて集荷に来られない。でも弊社の持ってる2トン車だと何往復するのかという状況で。そこでトラックをレンタルすることになりインターネット検索でトラックランド近畿販売センターに辿り着きました。
星田:継続して借りているのは相性が良かったというのもあるんですが、何よりも店舗の対応が良かったんです。初めて借りた2019年度のレンタル期間が終わり、私が車両を返却しに行った時のこと。帰りは電車で帰るつもりでいたんですが距離感が全く分からなかったんです。店舗から最寄り駅まで歩けると思っていたんですが、徒歩で1時間近くかかるとのこと。それだと宮井との待ち合わせに間に合わないのでタクシーをお願いしました。そうしたら、ちょうどスタッフが帰るから乗せて行ってあげるよと最寄り駅まで送ってくれたんです。そのことがとても印象に残って翌年もレンタルすることになり、3年連続でお世話になっています。
宮井:本社移転と同時に隣町の湯浅町に集荷場も設置しました。生産者さんによっては、本社移転によって持ち込みが大変な人も出てきたので、そういう農家さんへは集荷場に運んでください。あとは私どもで持ってきますと。レンタル車両は集荷場から本社まで運んだり、箱詰めした商品を発送の拠点まで運んだりと利用しています。
-みかん農家さんのこと
みかん農家 宮井勇作氏(38歳)
20代は会社勤めをしていた宮井さん。30歳で家業を継ぎ、みかん農業歴は8年。温州みかんや、不知火(デコポンと同品種)・清見オレンジ・甘夏・バレンシアオレンジを作っています。3ヘクタールにも及ぶ栽培面積からは1シーズンに100t程のみかんを収穫するそう。
10月中旬から2月ごろまでは休みなく作業が続きます。気温や雨量など天候にも左右されるし、毎年同じようには絶対にならない。でも、それがあってのみかん作りなので、美味しいみかんができた時は格別の喜びが。納得のいくみかんができるように日々工夫しているそうです。
宮井さんのみかんの特徴は、甘いだけではなく、程よい酸味とコク、旨味が絶妙なバランスで余韻の残る後味。ついついもう一つ食べたくなる味とのこと。
幼木から育て、初めて収穫ができるようになるのに5年程かかるそうで、農業を継いだ8年前に植えた木が、ようやく美味しい実をつけるようになってきたとのこと。宮井さんの農園では60年にもなるベテランの木もあるそうです。
今後の夢を伺うと、難しいな…と照れながら「毎年、同じ量をならしたい。毎年、美味しいみかんができるといいな」慣れないカメラ撮影に笑顔を向けてくださいました。
-みかんの会のこれからのこと
みかんの会のロゴについて教えてください。
宮井:みかんの房を日本古来の柄「七宝柄」で表現しています。
みかんは果物のなかでも数少ない、手で皮をむける果物ですよね。幸せだったり、縁起の良さを、みかんの美味しさに込めました。今後は海外展開も視野に入れて、日本らしさも取り入れたいなと思い、和の要素も入れてます。
みかんの会のこれからを聞かせてください。
宮井:みかんという地場の特産物を毎年安定して全国に届けるということ。そして“次世代でも食べていける農業”というのを目指していきたいんです。生産者さんは代々続いていかないと技術は受け継がれない。だから何世代でも続くような農業を、弊社がサポートに入ることで、安定して、安心して行えるようにしていきたい。
そして、私たちはそれだけの取り巻きで終わりたくないと考えています。有田川町にはこの気候を活かした特産品がたくさんあります。この土地で年間を通して雇用を続けられる環境整備をしていくのが私たちの役割です。みかんが最盛期を迎える冬は県外からいろんな方が入ってきてくれるんですが、収穫時期が終わると帰ってしまう。夏場もこの土地に居続けてもらえるような雇用を考えていく。すると地域も活気付いてくるだろうし、様々な取り組みでこの地域の魅力を発信していきたいと思います。
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