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トラック運送の「適正原価」とは?導入背景や標準的運賃との違い・施行時期を解説

トラック運送業界では、運送に必要なコストを適切に反映した取引を実現するため、新たに「適正原価」の仕組みが導入されることになっています。

今回の記事では、トラック運送における適正原価の概要や導入される背景、標準的運賃との違い、施行時期などを解説します。あわせて、制度の導入に向けて運送事業者が備えておくべきポイントも紹介します。

トラック運送における「適正原価」とは?

トラック運送における「適正原価」とは、貨物自動車運送事業を適正に運営するために必要となる原価のことです。2025年6月に公布された改正貨物自動車運送事業法によって、新たに導入されることになりました。

適正原価は、燃料費のほか、全産業の労働者1人当たりの平均賃金を踏まえた人件費、減価償却費、輸送の安全確保に必要な経費、委託手数料、事業を継続するために必要な投資の原資、公租公課など、事業の適正な運営に通常必要となる費用を反映して国土交通大臣が定めます。

制度施行後、トラック運送事業者は、自ら引き受ける運送の運賃・料金だけでなく、ほかの運送事業者へ委託する際に支払う運賃・料金についても、適正原価を継続して下回らないようにすることが求められます。なお、個別の運送契約で一時的に適正原価を下回っただけで直ちに違法になるわけではなく、一定期間にわたり下回る状態が継続している場合が問題となります。

ただし、2026年9月現在、適正原価の具体的な算定方法や構成要素などについては有識者検討会で検討が進められている段階です。国土交通省では、走行距離や稼働時間などを基に適正原価を算出できる仕組みなどが検討されています。

導入される背景

適正原価が導入される背景には、トラック運送業界が抱える収益性の低さや価格転嫁の難しさ、ドライバーの処遇改善といった課題があります。

国土交通省の資料によると、トラック運送業では営業利益率が低い状態が長く続いており、赤字企業の割合もおおむね半数前後で推移しています。また、荷主などとの取引関係では運送事業者側の立場が弱く、燃料費や人件費などのコストが上昇しても、十分に価格へ転嫁しにくい状況が指摘されています。

さらに、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用され、輸送力不足が懸念される、いわゆる「物流の2024年問題」への対応も求められています。

そうした状況を踏まえ、安全確保やドライバーの賃金、車両への投資などに必要なコストを運賃・料金に適切に反映し、過度な低価格競争を防ぎながら持続可能な物流を実現するために、適正原価の制度が導入されることになりました。

標準的運賃との違い

「適正原価」と似た制度として、現在は「標準的運賃」が設けられています。標準的運賃は2020年4月に告示され、トラック運送事業者が自社の適正な運賃を算出し、荷主と運賃交渉を行う際の参考指標として活用されてきました。2024年3月には運賃水準や荷役作業の料金などについて見直しも行われています。

大きな違いは、「適正な利潤を含むか」「法的な義務があるか」という点です。

標準的運賃は、能率的な経営を前提とした原価に「適正な利潤」を加えた、荷主などから収受すべき運賃の参考水準です。一方、適正原価は適正な利潤を含まず、事業を適正に運営するために最低限必要となる原価として位置づけられています。そのため、実際に荷主から収受する運賃・料金は、「適正原価+適正な利潤」を基本に考えることになります。

また、適正原価には法的な義務が伴い、運賃・料金が継続して適正原価を下回らないようにすることがトラック運送事業者に求められます。現在の標準的運賃は、適正原価制度の導入に伴って廃止される予定です。

簡単に整理すると、「標準的運賃=利益まで含めた運賃交渉の参考水準」「適正原価=適正な事業運営のために確保すべき原価」という違いがあります。

適正原価が導入される時期

適正原価が導入される時期

「適正原価」に関する規定は、2025年6月11日に公布された改正貨物自動車運送事業法に基づき、公布の日から3年以内に施行される予定です。そのため、遅くとも2028年6月までに制度が施行されることになります。

ただし、2026年9月時点では、適正原価の遵守義務が始まる具体的な施行日はまだ確定していません。国土交通省では2026年7月から「適正原価の設定に向けた有識者検討会」を開催しており、適正原価に含める費用や算定方法などについて検討を進めています。第2回検討会は同年8月26日に開催されました。

今後、検討結果を踏まえて国土交通大臣が適正原価を告示し、その後、適正原価を継続して下回らないようにする義務などが施行される予定です。運送事業者は制度の開始を待つだけでなく、自社の人件費や燃料費、車両費などの原価を把握し、適正な運賃・料金を設定できるよう早めに準備しておくことが重要です。

適正原価の導入に向けて運送事業者が備えるべきこと

適正原価の導入に向けて運送事業者が備えるべきこと

適正原価の導入に向けて、運送事業者はまず自社の運送にかかる原価を正確に把握できる体制を整えることが重要です。燃料費や人件費だけでなく、車両の減価償却費、修理・整備費、保険料、公租公課、安全確保に必要な費用などを整理し、車両や運行ごとのコストを把握できるようにしておきましょう。

また、荷主との運賃交渉に備え、原価上昇の根拠となる資料を準備しておくことも大切です。燃料価格や賃金、車両関連費などの変化を継続的に確認し、必要なコストを運賃・料金へ反映できる仕組みを整えておくことで、具体的な根拠を示しながら交渉しやすくなります。

さらに、他の運送事業者へ運送を委託している場合には、委託先に支払う運賃・料金についても確認が必要です。適正原価の制度では、自ら受託する運送だけでなく、他の運送事業者へ委託する場合の取引も対象となるため、現在の委託条件や契約内容をあらためて整理しておきましょう。

適正原価の具体的な算定方法などは今後示される予定であるため、国土交通省から公表される最新情報を確認しながら、自社の原価管理や運賃設定、取引条件を見直していくことが重要です。

トラック運送の適正原価について

トラック運送における「適正原価」は、運送事業を継続するために必要なコストを適切に反映し、過度な低価格競争を防ぐための重要な仕組みです。今後は、燃料費や人件費、車両費、安全確保に必要な費用などを踏まえた原価管理が、これまで以上に求められます。

運送事業者は、制度の施行に備えて自社のコスト構造を整理し、荷主との運賃交渉や委託先との取引条件を見直しておくことが大切です。国土交通省の最新情報を確認しながら、適正な運賃設定につなげていきましょう。

参考:適正原価の設定に向けた有識者検討会

この記事を監修した人

この記事を監修した人 トラックランド管理人:高良

神奈川県出身。株式会社タカネットサービスの9年目の社員。
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